『タイのごはん』

図書館で引き続き借りた「絵本・世界の食事」シリーズ。 タイの料理、下ごしらえは時間をかけるが、暑いので火を使う作業は手早く済ませる。食材や料理もすぐ悪くなるので、市場や家の庭から持ってきてすぐ料理、作り置きはしない、と。 そう言われてみれば…

『リュパン対ホームズ』

小学生の頃に読んだ記憶があるが、ルパン原作者ルブランによる、割とルパン側に有利な展開だった印象。 大人になってから初めて再読したが、これ原題は「ARSENE LUPIN CONTRE HERLOCK SHOLMES(アルセーヌ・ルパン対ハーロック・ショルメス)」ということで…

『内藤ルネ自伝 すべてを失くして―転落のあとに』

少女画の世界に最初に「かわいい」という概念を持ち込んだと言われるイラストレーター、内藤ルネ氏の自伝。 日本の少女たちが絶大に信仰する「可愛い」という概念。これを日本の少女文化にもたらした人。それが内藤ルネさんです。(中略)ディフォルメされた…

『老人と海』

7月2日はアーネスト・ヘミングウェイの51回目の命日だった。ということで、今さらながら代表作を読んでみた。 ご案内のとおり、キューバの老漁師がひとり沖に出て大格闘の末に大物のカジキを釣り上げるが、港に帰る途中にその全てをサメに食い荒らされてしま…

『ピーコ伝』

糸井重里によるピーコのインタビュー。生い立ちから芸能界に入るまで、その後の活躍、そして病で失ったもの・得たものなどなど。 高校を卒業し、トヨタ自動車に入社(!)。しかしやはり自動車の仕事は合わず、サンヨーレインコートに転職。ハンサム揃いの営…

『アメリカのおいしい食卓』

図書館で見つけて何気なく借りて読んだ。 筆者の徳井いつこさんは仕事の関係でアメリカ暮らし&移動が多い時期があったらしく、各地で出会った光景をもとに、アメリカ人の食にまつわるエピソードをつづったエッセイ集。 アメリカでフォーチュンクッキーを始…

『深読みシェイクスピア』

ひょんなことから著者の松岡和子さんのことを知ったので、早速著書を図書館で借りてきて読んでみた。 松岡さんは英文学者でシェイクスピア戯曲の翻訳をライフワークにしている。蜷川幸雄演出のシェイクスピア劇シリーズの脚本はまさに松岡さんの手によるもの…

各国食事事情

「絵本 世界の食事」というシリーズが面白くて、図書館で順に借りているのだが*1、今回はイギリス、インド、インドネシアの食事について読んでみた。 イギリス トーストにベーコンエッグ、ソーセージ、豆、トマトといった英国風の朝食をわざわざ「イングリッ…

『吉原手引草』

先日エッセイ集『今朝子の晩ごはん』を読んだ*1、松井今朝子さんの直木賞受賞作品。江戸期の吉原を舞台に、人気絶頂で忽然と姿を消した花魁の謎を探るミステリー。 主人公が吉原のさまざまな人間に聞き込みをする体裁。全てが吉原の住人たちの一人語りでつづ…

『1Q84 BOOK 2』

今さら読んだので、このあとBOOK 3に続く…というのは承知しているのだが、初版当時はここで完結という体だったので、これはちょっと宙ぶらりんな感じの終わり方だった。 フィクションに囲繞(いにょう)された世界は、オセロで黒に挟まれた白が黒に裏返るよ…

『今朝子の晩ごはん 忙中馬あり篇』

直木賞作家、松井今朝子さんのエッセイ集。ブログをまとめたものなのだが、文字通りその日の晩ごはん(よくその日のキューピー3分間クッキングを参考にしている)を軸に時事ネタあれこれやかつて脚本も書かれていた歌舞伎の話、趣味の乗馬の仲間から仕入れた…

『世界ケンカ旅』

極真空手創始者の大山倍達氏による、世界を股にかけた武者修行時代の自伝。シカゴ、NY、マイアミ、ブラジル、香港、東南アジア、イラン、フランス…どこまでが真実で、どこからがフィクションなのか? 虚々実々の「ケンカ旅」の数々。 渡米した氏が欠かさずホ…

『われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る』

コンピュータとプロ棋士のどちらが強いのか? …この疑問はかなり前から好事家の間で広く語られていて、中にはヤミでコンピュータと対戦して惨敗してしまう棋士もいたようで、筆者である米長永世棋聖が2005年に将棋連盟会長に就任してすぐ、「プロ棋士はコン…

『服飾評論家が見てきた洒落者たちの風景 なぜ、ケネディはボタンダウンを着なかったか』

スーツの袖口のボタンは、ロシアに侵攻したフランス兵が、鼻水を軍服の袖口で拭うのをやめさせるために考案されました。 …タートルネックのセーターのことを、イタリアでは『ドルチェビータ』と呼ぶ。『甘い生活』という意味で、寒い冬に、首までぬくぬくと…

『私が愛した東京電力 福島第一原発の保守管理者として』

拉致被害者の会の事務局をやっておられた蓮池透氏による、氏の勤務先だった東京電力の回顧、原発事故の解説、今後の進むべき道の提言などをまとめた本。 これまでずっと原発は安全だと言い続けてきた自分がそこにいたわけで、自分も推進してきたのだから加害…

『富国強馬 ウマからみた近代日本』

明治維新後、軍国主義が進む中、近代戦の要である「軍馬」の整備は日本軍にとって焦眉の急だった。しかし日本在来種では全く役に立たないと実感した軍部および明治政府が、強力に馬匹改良を推進することになる。 日本各地に輸入馬を払い下げ、在来種との雑種…

『にっぽん製』

パリで知り合ったファッションデザイナーの美子と、柔道家の栗原との、奇妙な恋愛模様を軽いタッチで描いたラブコメディ。三島由紀夫にはこの系譜の作品群が実は割と多くあって(『夏子の冒険』、『複雑な彼』、そして先日取り上げた『命売ります』*1など)…

『命売ります』

久々に三島由紀夫を読みたくなって、書棚から未読作品で軽そうなところを一冊引っ張り出した。予想通り、あっさり読み終わった。 意味もなく自殺を図り失敗した広告代理店勤務の青年・羽仁男が、自分の命を売るという商売を思いつき、新聞に広告記事を出す。…

『1Q84 book1』

近所の図書館で予約していたのが、二百数番の順番待ちを経て手元に届き、そしてようやく読み終えた。あまり世評を聞かずに読みはじめたので、第一感は「『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に似ているかな」というものだった。あっちの世界とこ…

『K-POPがアジアを制覇する』

もともとは韓流ドラマのファンでも、まして韓流ポップのファンでもなかった筆者が、仕事の取材をきっかけにどっぷりとはまっていった経験を元に、いまK-POPで何が起こっているのかをレポートした本。 女性というのはアイドル本人の気持ちを知りたい生き物で…

『吉本隆明「食」を語る』

3月に亡くなった吉本隆明氏。うちの書棚には『共同幻想論』とこの本の2冊が並んでいた。で、とっつきやすそうな本書の方を読んだ次第。 食の評論家である宇田川悟氏がインタビューする形でつづられた、吉本さんの「食」にまつわる半生の記。と言っても実は「…

『未知との遭遇:無限のセカイと有限のワタシ』

この本を読んで考えたこと。 運命論の論考…過去は「引き起こされた」ものではなく「引き起こす」もの? あらゆる人物の人生をデータ化して、自分の過去と照らし合わせれば、自分の未来の「傾向」が見えてくるかもしれない。ビッグデータの時代ならではの、「…

『浮世絵 明治の競馬』

今年は日本における「近代競馬150周年」にあたるそうだが、近代競馬とはいったい何を指していて、どこから数えて150周年なのかよく分からなかったので、何冊かの本を図書館から借りてきて自分で調べてみることにした。まずはこの本。 結論から言うと、いまか…

『銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎』

上巻に続き、下巻を読んだのだが、こちらはあまりエキサイティングには思えなかった。上巻でドラマチックに再現された「西洋文明」による「新世界」の征服が、銃・病原菌・鉄などを直接の要因と捉えていたのに対し、下巻ではそれら「西洋文明」が他地域より…

『銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎』

もともと生物学の学士からはじまり、生理学、進化生物学と研究を広めるなかで、ニューギニアでのフィールドワークを行っていた筆者の前に、現地の住民が「なぜニューギニア人は西洋から多くのものを持ち込まれたのに、ニューギニアから西洋に広まったものは…

『俳句的生活』

“俳句界の貴公子”こと長谷川櫂氏による俳句エッセイ集。 私が熱心に「NHK俳句」を見ていた頃、当時の講師陣の一人として氏を初めて知ったのだが、その後「俳句における“切れ”」の効果を探求する著書を読んで感心したものだった。もともと新聞社に勤めていた…

『フランス雑貨の旅』

何の益もないこういう雑貨の本、たまに読んでみたくなって図書館で借りてくる。 これを読んでいて思い出したのだけれど、私は以前からカフェオレボウルというものが欲しかったのだ。あれでたっぷり紅茶なりコーヒーなりを飲んでみたい。あつあつのボウルを両…

『神楽坂・茶粥の記』

矢田津世子という作家のことについてはこの本を手に取るまで全く知らなかったが、早世の美人作家として一部ではアイコン的な存在であるらしい。秋田県に生まれ、9歳のときに一家で東京へ転居、二十歳頃から執筆をはじめ、当時(昭和の最初の20年間)雨後の筍…

『意味がなければスイングはない』

村上春樹氏が、自分の好きな音楽について書き綴ったエッセイ集。 自身あとがきで「言い訳をするのではないが、音楽について感じたことを文章のかたちに変えるのは、簡単なことではない。」、「それが結果的にうまく行ったか、あまりうまく行かなかったか、そ…

『台所のおと』

幸田露伴の娘、文(あや)さんの短篇集。 幸田文は著作の多くを生前に出版しなかったらしく、この短篇集も没後にまとめられたもののひとつ。家父長制が残っていた頃の東京の家庭を舞台にした作品がいくつか並んでいて、興味深く読んだ。妾はいらないけど、使…