『富国強馬 ウマからみた近代日本』

富国強馬―ウマからみた近代日本 (講談社選書メチエ)
明治維新後、軍国主義が進む中、近代戦の要である「軍馬」の整備は日本軍にとって焦眉の急だった。しかし日本在来種では全く役に立たないと実感した軍部および明治政府が、強力に馬匹改良を推進することになる。
日本各地に輸入馬を払い下げ、在来種との雑種を進めることで改良を図る姿勢などは、現在の日本馬産にも通じるところがある気がする。というよりも、馬産に限らず日本の産業全てが、多かれ少なかれ官主動で振興されてきたことの一例に過ぎないのかもしれない。
ともあれ、そうして始まった馬匹改良も、初期はなかなか西洋種が浸透せず苦労したが(明治38年80パーセント)、後期は法令を整備して国をあげて進めたため(明治39年から18年間の第一次馬政計画第一期)、明治44年には純粋和種は1パーセントになっていたという。
ちなみに日本における競馬振興も、まさにこうした流れの中で法整備が行われたもの。長距離競走や障害競走が盛んだったのは、それが軍馬に求められた能力の検定のためだったために他ならない。