『老人と海』

老人と海 (1966年) (新潮文庫)
7月2日はアーネスト・ヘミングウェイの51回目の命日だった。ということで、今さらながら代表作を読んでみた。
ご案内のとおり、キューバの老漁師がひとり沖に出て大格闘の末に大物のカジキを釣り上げるが、港に帰る途中にその全てをサメに食い荒らされてしまうというお話。
骨だけになったカジキを見て、港に来ていたアメリカ人観光客の女性が一言、「あれって鮫なの?」…全てを無に帰すかのようなラストの台詞。三島由紀夫豊饒の海」四部作にも通じるような、一見ペシミスティックな幕引きではある。しかしここには、老人の偉大さを信じてくれる「少年」というわずかばかりの救いが残されている。
人はみな、それぞれの獲物を捕らえるために海に出て、そして全てを徒労に終えるのかもしれない。だからこそ我々には、それぞれにとっての「少年」が必要なのかもしれない…とか、てきとーに考えた。


今回、新潮文庫福田恆存訳で読んだけど…なんというか、ちょっとばかりこなれ過ぎの感あり。ヘミングウェイの乾いた文体と無骨な老人の独白が、あまり活きていないように感じた。それでも充分心を打たれたけど。