『吉原手引草』

吉原手引草
先日エッセイ集『今朝子の晩ごはん』を読んだ*1松井今朝子さんの直木賞受賞作品。江戸期の吉原を舞台に、人気絶頂で忽然と姿を消した花魁の謎を探るミステリー。
主人公が吉原のさまざまな人間に聞き込みをする体裁。全てが吉原の住人たちの一人語りでつづられる吉原の悲喜こもごもの世界。客あしらいについての極意を語る見世番は実はかつては自らが客だったり、女房を苦界に沈めて初めて「惚れた」という男、「…だすけ」という越後なまりも個人的に懐かしい小千谷縮問屋。会話から立体的に浮かび上がってくるところは見事だった。
なかでも楼主の舞鶴屋庄右衛門が語る次の言葉は、一つの真理をずばり言い放ったものだと思う。

世間は廓が嘘のかたまりだというが、しかしここほど男が本章を剥きだしにする場所もねえ。アハハハ、それこそがまさにこの世の真実なんだよ。