『リュパン対ホームズ』

リュパン対ホームズ (創元推理文庫 107-2 アルセーヌ・リュパン・シリーズ)
小学生の頃に読んだ記憶があるが、ルパン原作者ルブランによる、割とルパン側に有利な展開だった印象。
大人になってから初めて再読したが、これ原題は「ARSENE LUPIN CONTRE HERLOCK SHOLMES(アルセーヌ・ルパン対ハーロック・ショルメス)」ということで、ホームズのアナグラムの登場人物との対決なのか。作者のルブランも、一応その辺は敬意を払っているというか、当時著作権という考え方がどの程度浸透していたのかよく分からないが。
もちろん、狂言回しとして、ガニマール刑事も登場する。

ガニマールは、その捜査方法をもって一派をなし、その名が司法史上に残るような、そんな偉大な警察官のひとりではない。彼には、デュバンやルコックシャーロック・ホームズ級の人々を輝かしているあの天才のひらめきが欠けている。しかし、観察、聡明、忍耐、さらには直観さえもの、平均的な能力はりっぱに持っている。彼の真価は、絶対的な独立性をもって活動することにある。おそらく、アルセーヌ・リュパンが彼に対して及ぼす一種の幻惑以外には、何物も彼をかき乱したり、彼に影響を与えたりするものはないのだ。

この一節には、逆に言うと筆者がルパンやホームズをどのように捉えていたのかがよく表れていると思う。


本作に垣間見える、フランス人の英国人に対するコンプレックス。…そういえばリュパンは、本邦で明智小五郎とも対決していたな。