その名はアルプス

日本酒の醸造に使う酵母で「アルプス酵母」というのがあるらしい。長野県で発見(というか種分け)されたので、こんな名前が付いたのだとか。
日本酒のほとんどは熊本産の酵母で米を発酵させるのだが、コンクールなどに出品されるごく少数のお酒は、ほとんどがこのアルプス酵母を使っている…という話を、今日行った酒屋さんで聞いた。
何故かというと、このアルプス酵母を使うと香りが非常に強くなり風味が増すから。アルプス酵母使用の大吟醸を試飲させてもらったが、大げさではなくて本当にフルーツの風味がした。そしてそうした飲み口がコンクールの審査員にウケるので、金賞狙いの酒蔵はこぞってアルプス酵母を使うのだそうだ。


ただフルーティ度が増すということは、逆に言うと魚介類と一緒に飲むには適さなくなるということだ。白ワインのアテに刺身を食べないのと同じ理屈で、こうしたアルプス酵母使用の吟醸酒などを口に含んだ後では、生臭さが際立ってしまってどんなに美味しい魚でも台無しになってしまう。
日本酒コンクールの審査の場では、お酒と一緒につまみが出てくるわけではなく、あくまで日本酒そのものの味を比べる。コンクールの賞自体は客観的で価値あるものだが、審査方法を考えれば、我々が料理と一緒に楽しむシチュエーションとは自ずと違う評価になってくる。


さらにこの酒屋さんによると、同じ銘柄のお酒でも年によって杜氏の体調も違えば、酒蔵によっては使うお米も違うそうなので、味が全然変わってくるのだそうだ。これもワインで考えれば当然のことなのだが、どうも日本酒を選ぶときは銘柄だけで選んでしまいがちだ。何でもかんでも純米大吟醸ならいいとか、久○田の万寿なら間違いないとか、そういうことではないらしい(人に贈るものならそれで構わないかもしれないけど)。
試飲もせずに銘柄買いで品物を並べているだけの酒屋さんも多いので、ちゃんとした誠意のある酒屋さんを見つけて、お店の人に好みを伝えながら、今年のお酒の出来具合を聞いて買うのが、賢い日本酒の買い方と言えそうだ。今さらながら。