『〔増補〕競馬学への招待』

増補競馬学への招待 平凡社ライブラリー (537)
山本一生・著。この前本屋に行ったら、この本の「ダービー前夜は山本一生の本を読もう」という帯が目に入ったので、手にとってみました。面白そうだったので購入。
主としてイギリスの競馬に取材。章ごとに「空馬(からうま)」、「騎手」、「エプソムダービー」、「日本競馬の曙」、「馬術競技に転向したサラブレッド」、「血統」、「替え馬事件」…などについて紹介した本。
マニアックすぎず概論すぎず、ほどよいバランスの内容で、競馬の初心者からベテランまで満足のいく本だと思います。


興味深く読んだのは、「モンキー乗り」と呼ばれる競馬独特の騎乗法についての章。アメリカで発祥したこの乗り方は、ある一人の米国人騎手によってイギリスにもたらされたのだとか。
最初は「枝の上の猿みたいだ」と英国人にバカにされていたのですが、この騎手が乗ると馬が変わったように成績がよくなるので、騎乗依頼が殺到し、やがてモンキー乗りがヨーロッパ競馬を席捲したのだとか。
しかしこの騎手も、やがてスキャンダルに巻き込まれ、没落していきます。


馬/人間に関わらず、競馬の世界の栄光物語には、何故か常にこうした挫折の影がつきまとうのです。それも我々をひきつけてやまない部分なのでしょうね。「盛者必衰」というか。