『ニューヨーク・スケッチブック』

ニューヨーク・スケッチブック (河出文庫)
ニューヨークに住むごく普通の人々に取材した掌編集。

ニューヨークのいいところは、口で説明しようとしたって、できるもんじゃない。それを知りたければ、住んでみるしかないのだ。

大人になり、もはや人生に「期待すること」よりも「諦めること」のほうが多い年齢になったことに、本書を読んでいて気付かされた。しかしそれは、決して悲しい事ではない。誰の身にも訪れる自然の成り行きなのだ。

はるかな昔のある日、これから世界のすべての大都市で愛し合おうじゃないか、使用ずみのパスポートで棚をいっぱいにして、最後はいつも家に帰ってくることにしよう、とマーガレットに話したことを、彼は思い出した。が、結局二人が持ったパスポートはただの一冊に終った。


大人の寓話集とも言える本書は、これからの私の人生で大事な一冊となっていく気がした。