『狩猟サバイバル』

狩猟サバイバル
登山ライターの筆者が、山の中での食料調達手段として猟銃による狩猟を習得、いよいよサバイバル登山を敢行するまでを追った、セルフルポ。
第二次ベビーブーマー世代である筆者は、世の中の多くの人と同じように大人になるまで狩猟はおろか家畜の解体にも関わったことがなかったのだが、この本で語られている時期には、獣道の足跡をたどり、待ち伏せをし、猟銃でシカを仕留め、その場で血抜きをして解体、簡単な調理をして食べたあとは、非常食代りに一部を燻製にしたり、さらに残りを家に持って帰ってカレーにして食べたりすることができるようになっている。
その中で筆者は、生き物の息の根を止めるということについて、躊躇し、逡巡し、しかしその迷いを振り払って猟銃の引き金を引く。きっと本職の猟師(というか趣味で継続的に猟を行っている人々)たちは、そんなことを考える暇もなく、ただただ銃を撃っているのではないだろうか。ナイーブ過ぎる筆者の姿に共感できるか否かで、読者のこの本に対するスタンスは百八十度変わるのではないだろうか。


夕食にヒレカツを食べていたときに、「お父さんはいま、肉をどう手に入れるかって本を読んでるよ」と子どもらに言ったところ、長男が「『肉体の学校』?」と聞いてきた。それは三島由紀夫の小説だよ…。リビングに置いてある本棚に私の三島コレクションがずらっと並んでいる、その中にある1冊を見覚えていた模様。