「バベル」

「21g」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督。「21g」では交錯する3人の男女の人生を見事に収斂させていたのに感心したが、今回も3カ国で4つのストーリーが語られ、それが一丁の猟銃により結びつく。ただ本作については、ちょっと無理があるというか、それほど密接なつながりというわけではなかった。


タイトルになっている「バベル」というのは、旧約聖書の有名な「バベルの塔」のエピソードにちなんでいる。アレハンドロ監督は、すれ違いながらよりかかって生きている現代人のドラマを撮るにあたり、「神に近付こうと不遜な考えを持った人間が、天罰として多言語・多民族に分けられた」という挿話が相応しいと思ったようだ。
そういう目で見ていると、4つのストーリーのそれぞれに「塔」の象徴と思しきイメージが出てくるのに気付いた。

モロッコの家族のパートでは、少年が銃弾を撃った荒涼とした岩山。
メキシコのパートでは、結婚式でみんなが担いで持ってきたウェディングケーキ。
アメリカ人夫婦のパートでは、モロッコ市街の上空を飛ぶ救急ヘリコプター。
そして日本人父子のパートは、ラストでカメラがぐっと引いていく場面で映る隅田川沿いの高層マンション。

上記4つの解釈は、私のこじつけに過ぎないかもしれないが、現代人はその生活環境に関わらず、みなそれぞれにぞれぞれの「バベルの塔」をこしらえている…というメッセージだと思った。