「社長漫遊記」


森繁久弥の「社長漫遊記」を見た。森繁さんやフランキー堺さんの、どこまでが脚本どおりでどこからがアドリブなのか分からないくらい軽妙洒脱な台詞回し、感心した。
アメリカ帰り、というのが立派な「箔」だった時代であり、プラグマティズムが最先端だった時代、それを取り込もうとしていた日本のサラリーマンたち。なんせ若戸大橋が開通、八幡のスペースワールドがオープンというのが作中出てくるくらいだから、日本がまさに戦後から高度経済成長に入っていく時代である。
「アメリカで痔の手術をしてきたから、あちらの血が入ってる」とうそぶく森繁社長、さっそく会社で「役職ではなく下の名前で呼びなさい」と呼びかけたり、ざる蕎麦をフォークで食べたり…あからさまなアメリカかぶれな。後の植木等の無責任社員なら、森繁社長の苦労を軽快に笑い飛ばすだろう。さらに後の加山雄三の若大将なら颯爽と溶け込むところ、森繁の社長は形から入って失敗するというのも面白い。さらにさらに後の島耕作なら、「まいったな…」と頭をかきながら現地の女性と床をともにするところ、森繁社長は2号さんと本妻の間を右往左往。
それぞれの時代の、あらまほしきサラリーマン像を比較して考えると、なかなか面白い。


どうでもいいけど、みんなポケットチーフをしていたのが印象的。ソフト帽はかぶってなかったな。自分もチーフやろうかな。