「父と息子のフィルム・クラブ」

父と息子のフィルム・クラブ
ある日突然高校を中退した息子。映画評論家だが現在は連載も番組も持っていない実質上失職中の父親は、中退を許す交換条件として「週に一回お父さんと一緒に映画を見ること」を息子への課題とする。
作者のデヴィッド・ギルモア氏自身映画評論家で、実際に高校をドロップアウトした息子がいる。言わばこの小説はセミ・ドキュメンタリーなのだ。はたして息子は無事に社会復帰できるのか、次々に舞い込む息子の女性問題に決着はつくのか…私自身子どもを持つ身として、興味深く読んだ。

自分は何とわずかなものしか彼に与えられないのだろう、と私は思った──さしあたっては動物園の希少な動物に対するように、励ましというリンゴの一切れしか与えられないのだから。

だれかに映画を推薦するのは、大きな危険を伴う行為である。ある意味で、それは誰かに手紙をしたためるのと同じく、自分の内面を露わにする行為なのだから、それは自分の思考法を示し、自分がどういうことに感動するかを示すわけだし、ときには自分が世間にどう見られているかを示すことすらある。


訳者の高見浩さんは、私の大好きなエルモア・レナードの数々の作品を訳している。本作中でも、エルモア・レナードの小説やその映画化作品について触れられている箇所があったのにニヤリとさせられた。