「新・平家物語(一)」

新・平家物語(一) (吉川英治歴史時代文庫)
数年前にNHKで人形劇にもなった、吉川英治による渾身の平家物語
私は幕府の中で一番好きなのは鎌倉幕府なので、その成立前後についてじっくり物語で読んでみたいと思い、高校生の頃に古本屋で全巻セットを購入した。爾来、いつか読もういつか読もう…と思っていたものの、あれから早くも十年余。ようやく重い腰を上げて、第1巻を手に取ったというわけ。


物語はご存知「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅雙樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂には亡びぬ。偏に風の前の塵に同じ…」の序文の後、まだ若い青年時代の平清盛を主人公に幕を開ける。武家が政治の周辺から中枢へ駆け上っていく、まさにその予兆が漂う政変の時代である。
第1巻のクライマックスは、叡山の僧兵が日吉神社の神輿をかついで山を下り、御所へ強訴に押し寄せようとするのを清盛が押し止めるシーンだろう。清盛はあろうことか神輿に矢を放つ。迷信(古い寺社勢力)が力を失い武力(武家)が逆転する、その象徴のような痛快な場面である。


第1巻は保元の乱前夜、まさに嵐の前の静けさの中で終わる。読んでいるうちに日本史で習ったことを思い出したりして、思った以上に面白い。
このまま最後まで一気に読み切りたいところだが…問題が一つ。本作は何と全16巻なのだ。最終巻に辿り着けるのは、果たしていつのことか…。