『競馬の快楽』

競馬の快楽 (講談社現代新書)
古本屋で見つけて何気なく購入。
著者の植島啓司氏は私が大阪で大学生をやっていた頃は関西大学の教授で*1、競馬に造詣の深い文化・宗教人類学者という変り種として競馬マスコミによく登場していた。あれは関西版だけだったのかもしれないが、朝日新聞あたりでもよく競馬の記事を書いていたように記憶している。当時熱心な競馬ファンだった私には、懐かしい名前だった。

 よく考えると、オッズというのは、本来イーブンを原則にして設定されているものであり、それゆえに、適切な賭けとは一〇対九から二対一に至る振れ幅に収束されてしかるべきものなのかも知れない。実際、賭けが合理的と思われるのはおくまでその範囲内においてなのである。
 だが、われわれはどうしてもそこにとどまることができない。賭けは、他のすべての耽溺行為と同様、逸脱し続けることによってしか意味をもち得ないからである。そうなると、われわれは最後にはイーブンを放棄して一攫千金の宝くじのようなものに行きつかざるをえないのだろうか。すべて偶然によって支配される世界を、結局われわれは待ち望んでいるのだろうか。

*1:今回調べてみたら2002年に関西大学を退任し、現在は在野で?研究や執筆活動をされているらしい。