『重賞』

重賞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-3))
先日亡くなったディック・フランシスの競馬ミステリ。新潟の同僚から借りていたのを、こちらに引っ越してきてから慌てて読んだ(もう遅い)。そのうち返さないと。

若くして独創的なおもちゃの特許で財を成したスコットは、将来を嘱望された障害レースの調教師に勧められるままに馬主となったが、ある日自分の持ち馬がレースの際に摩り替えられていたことに気付く。
あまつさえ調教師により罠にはめられてしまい、競馬サークルから白眼視されてしまうスコットだったが、信頼できる仲間たちとともに仕返しを企てる。

今作の主眼は、馬の替え玉である。
非常に良く似た馬2頭がいて、片方は重賞レースでも勝てるような馬、もう片方は全然走らない馬をだとする。前者がよい成績をおさめた後で、いよいよ大きなレースを走る段になって「絶対に勝つ」という触れ込みでブックメーカーに金を賭けさせるのだが、実際にレースを走るのは後者の馬であるため、不可解とも言える惨敗をし、ブックメーカーとグルになっている調教師の2人ががっぽり儲ける…という仕組みの詐欺だ。
それにしても、以前シャーロック・ホームズの「白銀号事件」を読んだときにも思ったのだが*1、英国の競馬ではレースの前にちゃんとした馬体検査を行わないのかしらん? 日本の競馬ではこういう替え玉事件が起こらないように、馬の毛色、星(白い斑点)の特徴はもちろんのこと、つむじの位置まで詳細に書かれた記録書を元に、入念な検査をするのだが…。