「殺人の追憶」

殺人の追憶 [DVD]
韓国で実際に起きた未解決事件をもとにしたサスペンス。

とある農村で、1986年からの6年間で10人の女性がレイプされ殺されるという事件が起きた。警察は大勢の容疑者を取り調べるが、真犯人にはなかなか辿り着かない。しかし、ついに最有力の手がかりをつかみ、容疑の確定のために当時韓国内では技術的に行えなかったDNA鑑定をアメリカの調査機関に依頼するのだが…。

映画の解説によると、当時の韓国の警察は、刑事事件よりも学生デモの取り締まりなどの公安事件に力を注いでいたため、こうした殺人事件の捜査が若干おざなりになっていたところもあるようだ。
それにしてもソウル五輪が1988年のことなのだが、この映画で再現されている当時の韓国の警察の捜査や取り調べのなんと前近代的なことか! 殺害現場は野次馬や報道関係者に踏み荒らされるし、容疑者は拷問に近い取り調べで無理やり自供させようとするし。全部が全部こうだったかどうかはともかく、ある程度の雰囲気は伝わってくる。
また、物語の途中で何度か出てくる、「訓練空襲警報」。これは北朝鮮からの攻撃に備える訓練で、ラジオや街角のスピーカーから警報が流れ、灯火管制や建物内への避難を呼びかけるものなのだが、こんなことがつい最近まで行われていたことを初めて知り、韓国は休戦中の国なのだと改めて思い知らされた。
この映画も、20年近く前の未解決事件に題材をとっているが、真犯人探しというよりも、事件を介して当時の韓国の雰囲気を再現しているところがミソなのだと思う。


映画そのものは、「実話に基づいている」ということで3割増しくらいの迫力が出ている気もする。犯行が雨の日に集中して行われていたということで、「セブン」のように雨の中でのシーンが多かったが、不気味さはうまく醸し出されていた。
しかし警察の捜査が時代遅れなことも、真犯人が結局見つからないことも含めて、なんとも歯がゆい映画だった。