『メグレと深夜の十字路』
とあるエッセイに「メグレ警視」のことが書いてあった。
メグレ警視について私は、フランスのミステリシリーズの主人公…というくらいの知識しか持ちあわせていなかったので、そのエッセイに書かれていた当時(戦前)のパリの様子に興味を覚え、これは一度読んでみようという気になった。
さて、調べてみるとメグレ警視シリーズは、大小あわせてなんと100篇近くもあるらしく、素人としてはどこから手をつけていいものか分からない。で、「メグレ 傑作」とか何とか適当に検索して、引っかかった本作をとりあえず図書館で借りて読んでみた。
本作は一連のメグレものの中では初期の作品で、シリーズ中では珍しくパリではなく郊外の農村が舞台である…ということでいきなり「戦前のパリの様子」どころではなくなってしまったが、ト書きのような簡潔な文体で語られる一種の悲劇を、そこそこ堪能した。ちなみにこの突き放した文体は、作者ジョルジュ・シムノン*1特有のものらしい。
ただ惜しむらくは、その文体から編み出される折角の緊張感溢れるストーリーも、肝心のミステリが、終盤で容疑者たちが順番に自白してようやく解決されるという、何とも浅い結末だったこと。これも氏特有のものなのかしらん?