『マルタの鷹』
ハードボイルド小説が好きなつれあいから借りて読んだ。昨年後半は平安とか鎌倉とか、そんな本ばかり読んでいたので、ちょっと離れてみたくなったのだ。
ダシール・ハメット作『マルタの鷹』*1は、後のハードボイルド小説の嚆矢として有名な小説で、それまでの探偵小説の常識を覆すタフでクールな主人公(サム・スペード)が、自分の力だけを頼りに事件を解決する様が一世を風靡した。後にハンフリー・ボガート主演で作られた映画も、傑作として名高い。
サム・スペードが女に媚びないところがかっこいい。ちゃっかり据え膳を食った後でも、自分の命と天秤にかけて平気で女を突き出すクールさよ。
「おれはきみを警察へ引き渡すつもりだよ。まあ、生命だけは助かるだろう。つまり、二十年もたてば、また娑婆に出てこられるだろうという意味だ。きみは天使だ。おれは待ってるよ」彼は咳払いした。「万一死刑になっても、おれはいつまでもきみのことを忘れないだろう」
クールとニヒルはまたちょっと違うかもしれないけれど、この辺の突き放した感じなんかは柴田錬三郎の「眠狂四郎」に通じるものを感じた。そうか、眠狂四郎は日本の江戸時代を舞台にしたハードボイルド小説だったのか。
あと、ハードボイルドの主人公になるためには、睡眠時間を削ってもものともしない体力が必要だと感じた。