『世間胸算用』

ISBN:4044009058
大坂の町人たちが、大晦日の決済日を前にあくせくしている姿に、クレジットカード支払日前の自分を重ねてみたり…。ほとんどが「集金人から逃れよう」というエピソードだけで、こんなに面白い物語が書けるのですね。
というか最後は「こりゃだめだ」と言って帰ってしまう集金人(「かけごひ」)たちも集金人たちですよ。おおらかな時代というか、人情の通じる世の中というか。
一番面白かったのは巻五の「つまりての夜市」かな。

貧乏人でもちょっとづつ倹約すればお金は貯まるもの。日に一文づつ蓄えれば、一年で三百六十文、十年で三貫六百。
毎日毎日酒なんか飲まなければ小金持ちになってたであろう男が、正月についに酒代がなくなって、古物を取引する夜市で夏に買った笠を売るが、二束三文に買い叩かれる。ところが帰りに買ったたばこ箱の底に…

っていうかそんなこと言われなくても分かってますよ。分かってますけど無駄な金を使うんですよ。俺だってこれまでお酒を一滴も飲まなければ、いくら貯まってることやら…。