『戦争における『人殺し』の心理学』

ISBN:4480088598
第一次大戦くらいまで、銃を持った兵士の発砲率は、なんとわずかに10%〜20%くらいだったそうです! つまり10人に8人は、鉄砲を持ってて構えはするけれど撃ったフリをしてただけ、というわけです。また発砲した兵士についても、「わざと敵を撃たないように狙いを外していた」という証言もあるほどで。
それほど戦争という非常事態においても、人が人を殺すことへの本能的嫌悪感がある(あった)ということでしょうか。
ところがこれを重く見た各国の軍隊が、何とか発砲率を上げようと苦心した末、第二次大戦で飛躍的に上がり、さらにベトナム戦争あたりには95%の発砲率に至るわけです。
それは何故か?
単純に言ってしまうと、徹底的な「パブロフの犬」的すりこみを訓練に導入したわけですね。もう条件反射で敵を撃つ。しかも民間人と敵兵士を瞬時に見分けて。具体的には、それまで動かない木製の標的板で行っていた射撃訓練を、市街地やジャングルに模したフィールドで動く人形を標的にした訓練に変更したりしたわけです。
そんな単純なことで…って感じですが、やはり人を殺すことに対する恐怖や嫌悪を払拭させるには、何も考えずに体が動く状態にするのが最適だと。
で、筆者は最後に言うわけです。(だいたいこんな感じ)

実はこの軍隊式すりこみが、我々の日常生活のあらゆる場面に浸透してきている。テレビゲームや映画、テレビにおける暴力描写などがそうだ。『逆・時計じかけのオレンジ』とも言えるすりこみが一般化しつつある現代社会で、殺人や凶悪犯罪が増加しているのは当然なのだ。
我々はそろそろ、検閲ではなくモラルの問題としてこうした暴力描写を見直していく必要があるのではないか。

なるほどねー。