「明日に向って撃て!」

明日に向かって撃て!〈特別編〉 [DVD]
夜BS2で放送していたのを見た。


19世紀末から20世紀初頭にかけて(日本では明治の頃)、アメリカで実際に活動していた列車・銀行強盗のブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)の物語。
仲間とともに列車強盗を重ねるうち、腕ききの賞金稼ぎたちに狙われるようになった2人は、キッドの恋人エッタ(キャサリン・ロス)を連れて、新天地ボリビアに赴く。そこでまた強盗を繰り返すのだが、ついには騎兵隊に追い詰められてしまう。
B・J・トーマスの「雨に濡れても」をBGMにブッチとエッタが自転車に乗るシーンや、田舎町の広場で包囲された2人が最後に覚悟を決め銃を構えて飛び出し、映像はそのままストップモーションになり、騎兵隊の「撃て!」の声だけが響くラストシーンは、あまりにも有名。



この映画で「自転車」というアイテムは、来るべき新しい時代の象徴として使われている。作中でも西部の町にやってきた行商人が、群集の前で「馬の時代は終わりました! これからはこの自転車の時代です!」と口上を述べる場面がある。またボリビアに逃げるときにブッチは、「何が新時代の象徴だ!」と悪態をついて自転車を捨てていく。
果たして西部開拓時代の終幕に自転車が馬に取って代わったのかどうかはともかく(それを言うなら自動車だと思うが)、ブッチたちが時代に背を向けたことをシンボリックに描いた場面だ。



2人の最後、ありえないくらいの包囲網!
これを見る限り、どう考えてもブッチとキッドの2人は助からないと思わされるのだが、それでも実際にハチの巣状態になるところは描かれない*1ために、「もしかして助からないかしらん」という、ほんの僅かな希望を観客は抱くことができる。
明日に向って撃て!」という邦題*2はあまり好きではないのだが、このエンディングこそがまさに「明日に向って」いるところだろう。「明日」とはこの場合、2人が背を向けた来るべき新時代のことでもあり、また届かぬ未来の夢のことでもあるかと思う。

*1:本作と似たような邦題、似たようなストーリーで、同じように「アメリカン・ニューシネマ」の代表作とされている「俺たちに明日はない」のエンディングでは、主人公2人がまさにハチの巣状態になるのとは対照的

*2:原題は「Butch Cassidy and the Sundance Kid」(そのまんま!)