「夏時間の庭」

夏時間の庭 [DVD]
夏時間の庭(L'heure d'ete)」という2008年の仏映画を見た。オルセー美術館開館20周年を記念し、美術館および収蔵品を自由に使う許可を与えて作られた作品。
私がいちばん好きな映画女優であるジュリエット・ビノシュが出ているから録画しておいたのだが、ブロンドで変な感じだった。世界を駆け回るアーティストという役だったから、まあそういう元気な感じの役作りだったのかな。


亡くなった母親が残した膨大な美術作品をめぐる、遺された3人きょうだい(うち1人がビノシュ)やその子どもたちが描く人間模様。
3人の生家や調度品などにはきょうだいの誰もが愛着を持っているが、実際問題として故郷を離れそれぞれに活躍している現状では、それを管理する役目は誰も負えない。必然的に懐かしい品物たちは、他人の手に渡り、きょうだいやその家族の元を離れていく。
唯一の救いともいえるのは、それらが美術的に非常に価値の高いものだったため、まとめて美術館に引き取られることになる。かつて無造作に花を投げ込んでいた花瓶が、かつて老母が仕事をしていたライティングデスクが、美術館の一隅に展示されているのを見る、奇妙な体験。
美術品は美術館にあるのが本来の姿なのか、それとも生活の中で使われている姿が正しいのか。深い投げかけではある。 そしてそれは、「夏時間の庭」で生き生きと遊ぶ子どもたちの姿にも通じてくる。人間のあらまほしき姿とは…?
映画は、まもなく人手に渡る思い出の庭で、孫の世代の少年少女たちがヴァカンスのパーティーを開いている場面で幕を閉じる。彼らの心のなかにもまた、この光景は思い出として残る。次の時代の思い出は、別の場所に作られるのだろう。