『イワンのばか』

イワンのばか (岩波少年文庫)
題名は有名だけど、今まで読んだことがなかった本。岩波少年文庫でわずか60ページの短編なので、サラリと読んでみた。以前読んだ『人は何で生きるか』*1もそうだったけど、トルストイの短編童話ってこういう系統だったのか。ようやく分かってきた。
「働かざるもの食うべからず」「資本主義経済より重農主義経済」的な話なのだが(?)、それら本筋とは別にイワンを代表とする無知だけど地道に働く人々を「イワンはばかなので…」とか「イワンの国のばかたちは…」とか、ズバズバ言い捨てているのが面白かった。訳の問題なのかもしれないけど。


ちなみに私自身の感想としては、「働かざるもの食うべからず」は経済のある段階では確かに真実だけれど、社会の仕組みをもっと効率よくするために頭脳労働する人が出てくるのは、別に害悪ではないと思う。イワンの2人の兄(一人は軍隊力で、もう一人は資金力で国を奪って治める)のやり方も、一部は見習うべきところがあるのではないか。
それにイワンの国の民(“ばかたち”)は、軍隊が攻めてきても全てを明け渡したので兵隊たちがあきれて帰っていったとか、お金が流通するようになっても家に必要なだけ金貨が貯まったら欲しくなくなった…とかいうのは、童話にしてもあまりにも牧歌的というか楽観的すぎると思う。
北斗の拳」で無抵抗主義の村がラオウ軍によって踏みにじられるエピソードを思い浮かべた。