働くことと働かないことと

夜、NHKで2つの番組を見て思ったこと。


1つ目はBSでやっていた「世界ふれあい街歩き」、ロンドンのシティー篇の再放送。
この番組は毎回世界のとある都市の街角をふらふらとカメラが移動して回る、というただそれだけの番組なのだが、今回はロンドンのビジネス街シティーをふらふら回っていて、その一隅にある公園のベンチで息子と遊んでいるお父さんの姿が映った。
カメラがその親子に近寄って行き、以下のような問答があった。

「平日の昼間なのに、お仕事は休みなんですか?」
─そうだね、いま5ヵ月間の休暇中なんだよ。
「すごく長い休暇でいいですね。お仕事は何をされてるんですか?」
─ウイスキーを造る会社に勤めていたんだけど、数ヵ月前に辞めたんだ。息子と長い時間一緒に過ごせるのも、今くらいかなと思って。もうすぐこの子は学校に入るから、その後また働き始める予定だよ。

シティーの公園のベンチでのんびりと遊んでいたこの親子は、とてもくつろいだ雰囲気だった。息子と過ごす時間を作るために会社を辞める…というのも凄いと思ったが、またすぐに再就職できるようなビジネス環境にあるからこそ、できることなのかも。
今の日本で、もっと言えば今の私自身が、はたして何のためらいもなく同じことができるだろうか?


2つ目は総合でやっていたNHKスペシャルワーキングプア2」。
番組の内容は、id:nsw2072さんがとてもわかりやすくまとめていらっしゃるので、そちらをご覧ください。
この夏に放映されたNHKスペシャルワーキングプア」を受けて、NHKには1,400通に及ぶ手紙やメールが届いたそうで、その多くが「とても他人事には思えない」と、自らの「ワーキングプア状態」について伝えるものだったという。
制作サイドはこの異様ともいえる反応に、改めて現代日本のワーキングプアの実態について調査をし、今回はとくに「働く女性」に焦点を絞って第2回目のドキュメンタリーを制作していた。
この中で番組の冒頭で紹介されていた、小学生の男の子2人を持つ母子家庭の母親の姿が、とくに心に突き刺さった。
この女性は昼間に2つの仕事をこなし、夕食前後の3時間を子供たちと過ごすと、2人が布団に入ったのを見届けて再び深夜勤務のパートに出勤、帰宅するのは毎晩午前2時になるという。これで手取りが毎月約18万円。そうして自分の体がボロボロになったとしても、「あと10年なんとか頑張って、この子達を自立させたい」「大丈夫…ではないけれど、やるしかない」と目にうっすらと涙を浮かべて言われていて、やるせない気持ちになった。
甘えたい盛りの子供たちが、健気に家事を手伝ったりしていたが、やはりときどき甘えたい…というサインをこの女性に送っていたのが、見ていて非常に悲しかった。この一家が家族団らんを過ごす時間は、本当に少ないのだ。