いなたい

先日某所で「いなたい」という言葉を使って、そんな言葉聞いたことがない、意味がわからないと言われました。
私の感覚では、「泥臭い」とか「田舎臭い」、「くたびれた」という意味で使う言葉で、大体「いなたい感じの男が…」とか、「いなたい音楽のかかったバー」というふうに使います。「sophisticated」の反対の感じでしょうか。
皆さんはこの言葉、ご存知でしたか?


とりあえず広辞苑をひいてみたところ、確かに載っていませんでした。goo辞書でもweblio辞書でもwikipediaでも引っかかりません。
googleで検索してみたところ、約33,000件が検出されましたが、ここで上位に来ているサイトではほとんどが、私と同じように「いなたい」を普通の言葉だと思ってたら実は違った…的な紹介をしています。


たとえば検索結果のトップに来ている(多分)、作家の田中啓文氏のエッセイ「ちりぬる音座録」の第1回「いなたい」によると、こうなります。

 …(前略)皆さんは「いなたい」という言葉をご存じだろうか。関西のバンドマンの間ではごく普通に使われていると思うが、東京その他でも使われているかどうかは知らない。どういう意味かというと、まあ、ファンキーでブルージーでグルーヴィーで泥臭い、というようなことである。さっぱりわからないって? そうでしょう。「いなたい」というニュアンスを伝えるのはなかなかむずかしい。
 …(中略)という風に、「くさい」「黒い」「コテコテ」についてはだいたい語源というか出所がわかるのだが、「いなたい」についてはさっぱりわからない。関西圏以外でも使うのかなー。何となく大阪弁っぽいのだが、もしかしたら、九州方面が発祥地で、「そうではなかたい。否たい」というのが変じたとも考えられるし、「田舎っぽい」が転じたのかもしれない。とにかく、たいへん便利な言葉ではあるが、この言葉が関西以外でも使われているかどうか、および語源は何かということをご存じのかたがいらっしゃったら、e−NOVELSの掲示板までお願いします。


これら検索結果を散見するに、どうも関西(大阪)の音楽関係者の間で流通している言葉のようで、まあ大阪といえば音楽的には昔からブルースやファンクの盛んな土地なわけですが、そういう種類の音楽の「いい意味での黒人臭さ」を表現するのに、この言葉が使われているようです。
その言葉を、以前大阪に住んでいたことがあるとはいえ楽器もやらないし音楽雑誌も読まない私が、はたしてどこでどう仕入れたのか…もはや記憶にないわけですが、多分なにかのライナーノーツで読んだのでしょう。


【追記】
「みれどのABC」さんに「『いなたい』の発生と伝播」というエントリがあって、非常にわかりやすいです。それによると、「田舎」が語源なのではないか、とのこと。