『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
月曜日に渋谷に行ったとき、(土地柄というか)書店にこの本が山ほど平積みになっていた。なんとなく気になっていた本ではあるので、購入。


情報過多を実感する今日この頃、なんとなく「これからの時代は“編集者”の時代なのかな」と考えていた。
ようは情報を切り貼りし、個人の志向にあわせてカスタマイズして「さあどうぞ召し上がれ!」とお皿に盛って出してくれるような、そんな才能/機能が重宝がられる時代が、すぐそこまで来ているのかあ…と。


これまではそうした才能/機能は、本書で「エスタブリッシュメント」と一括りにされているような、大手マスメディアやその周辺の人間たちに独占されていた。
ところが、本書で言うところの「チープ革命*1によって、(私を含めた)ありとあらゆる有象無象がテキストをインターネットの世界に吐き出す時代がやってきた。
そうした玉石混交の情報カオスには、互いに参照しあい作用するエネルギーがあって、それがある臨界点を超えると爆発的なパワーを持つことになる、…というのは何となく予感していた。
そうした玉石混交の海を泳ぐツールは、いろいろと便利なものが出てきている。しかしそれらのツールを駆使したとしても、「情報カオスの全部を巡回して把握する」のは、どんなに暇な人でも不可能なこと。
だからこそ、その手助けをする“編集者”が必要になってくるのではないかなあ、と思っていたのだ。


私はまだ頭が古いので、その才能/機能というのは、たとえばカリスマブロガーといった「ヒト」であったり、オンラインのデスクトップ上であらゆる情報をカスタマイズ&サーブしてくれる「アプリケーション」であったりするのかな、と想像していた。
ところが本書を読んで、とくにGoogleが目指す世界観*2を知って、「現実世界の誰かや目の前のPC上で情報を編集する必要は、まったく無い!」ということに気付き、目からウロコが落ちた感じだ。


いま進行中の静かな革命は、リアルの世界ではなくウェブの世界で起きているのだ。ウェブリテラシーの格差が、10年後・20年後にどれだけの影響を持ってくるのか考えると空恐ろしくなってくる…というのは、少し大げさに過ぎるだろうか?

*1:ムーアの法則」に代表されるような、日進月歩の技術革新によるコストの低下と、それにより引き起こされる参入障害の解消を指す。

*2:本書で紹介されている、Googleに勤める人のこんな言葉がそれを端的に表している。──「世界政府ってものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣のミッションなんだよね。」