『生たまご ゆでたまごのキン肉マン青春録』

生たまご ゆでたまごのキン肉マン青春録
2009年は「キン肉マン」の連載開始から30周年にあたるらしく*1、それを記念して出版された、「ゆでたまご」こと嶋田隆司中井義則両氏の半生記。
私は1987年の連載終了時には小学6年生だった、まさにキン肉マン直撃世代。キン消しも集めたし、学校でパロ・スペシャルやキン肉バスターなどの必殺技をかけあったりしていたクチ。今でも主題歌「キン肉マンGo! Fight!」は空で歌える。
週刊少年ジャンプ」の最後のページにある作者からの一言コーナーで、「ゆで」と「たまご」の2人がコメントを出しているのを見て「ゆでたまごって2人なのか」と知ったのも今は昔だが*2、その2人が実は小学校以来のコンビだとは知らなかった。本書の中でも「(藤子不二雄の)『まんが道』に影響を受けた」という記述があるが、まさに『まんが道』を地でいくコンビなのである。
本書では嶋田・中井両氏の生い立ちから出会い、漫画家デビュー、絶頂期から連載終了後のスランプ期を経て現在に至るまでを、交互に語る体裁でつづっているのだが、ですます調の中井氏、文語体の嶋田氏それぞれの文章に味があり、また片方が語った事実を他方が補ったり違う視点で語ったり、コンビならではの回想となっているのが非常に面白かった。
とりわけ興味深かったのが、「キン肉マン」というキャラクターが2人の出会い直後にすでに生み出されていたというエピソードや、「キン肉マン」の連載終了後にいくつかの作品を発表したもののことごとく失敗*3して、やがて集英社から見放されていく話。
とくに後者については、通常右肩上がりで更新されるはずの契約金額(ジャンプだけに作品を提供するという契約の代わりに支払われる金額)を下げたいと編集部から迫られ、将来的なことも見据えてフリーの立場になった…という経緯が、割とリアルに切なく描写されていて読み応えがあった。

*1:2008年は「29(ニク)周年」ということでいろいろと動きがあったらしいが、その総決算のように(?)年末の格闘技イベントで「キン肉万太郎vsボブ・サップ」という迷カードが組まれたのも記憶に新しい。それについても「許可を出すべきか相当迷った」と本書に書いてあった。

*2:ちなみにつれあい(私と同い年)は、ゆでたまごが2人コンビの漫画家だといまだに知らなかった。

*3:「ゆうれい小僧がやってきた!」とか「SCRAP三太夫」、「蹴撃手(キックボクサー)マモル」など…全て中学生時代にリアルタイムで読んでいて、「つまらん」と読み飛ばしていた冷酷な読者の一人だった当時の私。