『弟』

弟 (幻冬舎文庫)
世間を騒がす兄弟げんか(+親子げんか)に触発されて、ブクオフ100円コーナーで買ったままになってたこの本を手に取りました。
ふつうにオモロいですわ。なんか一文がすげー長い慎太郎氏の文章が、最初のうちこそ鼻についたものの。


小樽で過ごした少年時代の記憶、父の死、高校から大学時代の放蕩、慎太郎氏の作家デビューと、その映画化にともなう裕次郎氏の俳優デビュー。そこから始まるスターダムへの栄光の道、後年スターの体を苛んだ病苦、そして死。
多少美化されて(?)いたり、文学的表現に装飾された部分もありますが、それでも少年時代に裕次郎くんが完璧なバランスの模型飛行機を作り、それを家の裏の崖から飛ばす挿話にはちょっとホロリとしました。

 しかし、なぜだか弟だけはみんなの後を追わず、私が促しても、あれはもういいのだというようにただ首を振って笑っていた。それはいかにも、あの模型とは思えぬ素晴らしい、生命をさえ感じさせる傑作を一人で作り出した男の自負と自身に満ちた表情だった。

この兄弟に関しては、一方が作家で政治家、他方が国民的俳優と、よくもまあ2人が2人とも活躍したものだと思っていましたが、そうではなくて、2人いたからこそ、あそこまで活躍できたのだということが、よくわかりました。
古今東西、スターや英雄と呼ばれる人には、常にその語り部が必要なのですね。
あと、政治の世界も芸能の世界も、ハッタリが大事だということもよくわかりました(笑)。


私自身、弟と2人兄弟なのですが、この兄弟ほど影響を与えあってはいないなあ。いま話題の兄弟みたいにけんか別れする場合もあるし*1。人それぞれですね。

*1:でも後年、お兄ちゃんが『弟』っていう本を出しそうな予感。。