『美少年』

美少年 (新潮文庫)
ブクオフ100円コーナーで発掘。団鬼六×美少年…もうタイトルからして猥褻でクラクラします。宇野亜喜良氏のカバー画も淫靡。
私小説の形をとった短編3本と、ロマンポルノの女王・谷ナオミさんの半生を描いたエッセイ1本を収録。
私小説のほうは、「でもこれってどこまで事実でどこからが創作なんだろう?」と詮索してみたくなる、めくるめく官能の世界。なんていうか、他人のとてつもない秘密を盗み見たようで、慄きながらも興奮してしまうのです。なおかつ日本語がとても綺麗。渡辺文学*1とやらにも、この爪の垢でも煎じて飲ませたいですわ、ほんと。
谷ナオミさんについてはほとんど存じ上げないのですが、鬼六氏とたこ八郎さん*2篠山紀信さん*3渥美清さん*4らとの交流も織り交ぜながら、ロマンポルノ黎明期のことなんかが描かれていて、なかなか面白かったです。

*1:3月21日の日記内「失楽園(上)」参照

*2:元フライ級チャンピオンのたこ八郎氏に芸能界の仕事を初めてさせたのが鬼六氏で、そのときの仕事はアニメ「フリント・ストーン」の恐竜の吹き替えだったとか

*3:「一緒に緊縛写真を撮りたい」と言ってきた紀信氏に、彼のことを当時まったく知らなかった鬼六氏は、何枚か写真を持ってこさせてアングルやライティングについて「悪くないけど…」なんて講釈を垂れたのだとか

*4:鬼六氏の邸宅に毎月のようにやってきた渥美氏は、映画の寅さんさながら、近所の人々を呼んで彼らの日常のお話を聞きたがったのだとか