「武士の一分」

木村拓哉meets山田洋次。「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続く山田洋次時代劇の3作目。
映画は主人公・三村(木村拓哉)が「箱膳」で朝食をしたためるシーンから始まる。この「箱膳」、家に欲しいなあ…と先日つれあいと話していたところだったので、個人的にタイムリーだった。飯と汁と菜、最後にお椀にお湯をそそいでさらさらと口にかきこみ、布巾でぬぐって箱膳にお椀とお箸をしまう。こういう食事がしたい…という話をしていたのだ。
こうした何気ない食事の場面だとか、三村が登城して渡り廊下の軒先で藩主を待つ間ヤブ蚊に悩まされる場面など、山田作品は細かい部分の気配りが非常に行き届いているので、違和感なく虚構の世界に入っていけた。


三村の妻を演じた壇れいさんの存在感が光っていた…という人が多いようだが、それは確かだとしても、やはり何よりも存在感があったのは、三村と果し合いをする島田役を演じた坂東三津五郎氏だろう。
三村の下男から果し合いの申し込みの言伝を聞き、「帰って主人に伝えろ、馬場端の川原に必ず行くとな。」と返す台詞回しは、そのまま歌舞伎の一幕のようだった。