『ゲーミフィケーション がビジネスを変える』

ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える
ここ数年脚光を浴びている「ゲーミフィケーション」という概念。本書によれば「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するもの」として定義される。あるいは、「外発的動機づけとの境界線的な要素(報酬)を求めるうちに、内発的動機づけを駆動させるようなメカニズム」とも説明されている。
こうした概念が広まってきた背景として、筆者は以下の3点を挙げている。

  • 測るテクノロジーの進歩
  • フィードバック速度の向上
  • ゲーム世代の成熟

個人の行動がオンラインでリアルタイムに定量化できるようになったことと、ゲームに慣れ親しんだ世代が消費者世代になってきたことが要因というわけだ。


私自身は、その効用はある程度は認めつつも、なんというかこれがビジネスにつながるとかいう言説には胡散臭さを感じている。
そもそもタスクをクリアすると何らかの得点が与えられる…という仕組み自体は、子育てをしていれば日常生活にごく普通に見られること。子どもがちゃんとおもちゃを片付ければ褒められるし、じゃあ今度は何秒でできるか競争しよう! なんてのも自然な流れである。それを大人の世界の仕事や活動にも導入するというのは、なんというか幼稚化・単純化にも思えるのだ…。
もう一つ胡散臭く感じてしまう理由として、ゲーミフィケーションは「導入にかかるコストが低い割に効果が上がる」というのもメリットとしてよく挙げられるのだけど、これって正当な対価のすり替えにつながるのではないかと感じるからだ。たとえば職場であるルールに沿って目標を達成したら「いいね!」シールが一つもらえる…のは確かに嬉しいかもしれないけど、そこはやはりボーナスアップや昇給の方が嬉しいと思うのだ。それができない(したくない)から、ゲーミフィケーションとか言ってごまかす企業が出てくるのではないかと危惧する。
あとそもそも、生活の大部分がゲーム化したら、ゲームの楽しさが薄れるんじゃないかとも思う。