『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』

なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)
正直言って韓国にパチンコがあったことも、それが全廃になっていたことも知らなかったのだが。韓国では2006年8月に、パチンコによる依存症の危険性を認識して前面禁止に踏み切ったそうだが、それ以前は認可店で15,000軒、無許可も入れるとと2万軒以上あったともいう。


韓国版パチンコは正確には「メダルチギ」といい、日本のパチンコやスロットとは少し性質の違う、よりギャンブル性の高いものだったらしい。
盤は日本のパチンコ盤の中古を使用するが、釘は全て根元で切断。1,000ウォンでメダル100枚を購入し、ハンドルを回すと4秒に1度のスピードでメダルが落ちてくる。メダルがスタートチャッカーをくぐれば液晶が回り、大当たりになれば玉の代わりに商品券が出てくる。(この辺りちょっとよく分からないのだが)液晶は常時回り、メダルがなくなるまでほとんど何もしなくていいらしい。日本とは違って2台以上の掛け持ちもOK、店は24時間営業、食事も台まで届けてくれる…と、それは依存症になるでしょうという環境。
もっとも、釘がないため釘で「出玉」を調整することもなく、日本よりはフェアであったとされるが…これって単なる液晶回しマシーンだよなあ、と*1
メダルチギは2000年頃に登場(日本のパチンコ業界が持ち込んだものではなく、韓国で独自に発生したものらしい)、2002年頃からブームとなり、先述の通り全盛期には1万5千軒、売上は3兆円にも及んだ。2004年には韓国レジャー市場全体の51.3%を射幸性ギャンブル産業が占めたというからすさまじい。ただ、日本のようにテレビラジオで宣伝もしなかったので、韓国人でも意外とゲームセンター(メダルチギの店をこう呼ぶ)が流行っていたことを知らない人が多いらしい。低所得者の遊びと見られていたようだ。
しかしこの隆盛も続かず、2006年6月、許認可を巡る贈賄事件、いわゆる「パダイヤギ(海物語)事件」が明るみとなり逮捕者には当時のノムヒョン大統領の親族まで含まれた。これを受けて当局は一気に全廃に向け動き出し、8月には早くも一斉撤去を開始している。


…と、こうした韓国事情自体はこれまで知らなかったので興味深く読んだが、筆者自身、「一言でいえば、『数千人の莫大な利益のために、数百万人を泣かせる行為』が、パチンコなのである。この国では、一部の人間の利益のために、法的には違法なバクチが、長年放置されてきたのだ。」…というスタンスなので、全体を通してかなりバイアスのかかった文章ではあった。上記のような話をした上で、ようは日本もさっさとパチンコを全廃するべき、というのが筆者の意見のようだ。
あと、参考文献が「週刊金曜日」とか「東洋経済」とか…まあいいんだけど、ちょっと浅い感じがした。

*1:この辺、実はパチンコが公正なギャンブルかどうかを論じるときのポイントで、日本のパチンコは店側の意図が介入する点において、公正ではない…というのが、世界標準からの見方のようだ。パチンコファンはそれらを「読む」技術も含めて楽しんでいるのだろうが。