『やめられない ギャンブル地獄からの生還』

やめられない ギャンブル地獄からの生還
つれあいが数日前にハマっていたギャンブル依存症の本を、遅れて読了。本の前半部は依存症の体験談が列記されているのだが、どれも恐ろしすぎる。その一部から、典型的ギャンブル依存者の行動を抜粋してみよう。

  • 借金するためなら平気で誓約書を書き裏切る。「もう絶対にギャンブルとは縁を切る」といった誓約書は意味がない。借金を立て替えても、余計に膨らませるだけ。
  • 用立てた金は、全部を返済に回さず、一部を手元に残して次のギャンブルの元手にする。
  • 窃盗や横領などの犯罪も、最初はドキドキしているがすぐに常習化。
  • 出産費用、会社の付き合い、財布をなくした、付け届けが必要、合宿、残業、配置換え、出張…ギャンブル資金を作るための嘘はいくらでも並べられる。
  • 身なりに気を使わなくなる。
  • 家族の誕生日も忘れる。
  • 出産で妻がいない時に思う存分やる。
  • 説得する世間に対する逆恨み。
  • ギャンブルの借金はギャンブルで返す、返せるという無根拠な思い込み。
  • 遁走、蒸発。
  • やめようとしてもテレビCM、新聞チラシ、国道沿いの看板やのぼりがすぐに目に入る。

依存症予防に、こういうのを100エピソードくらい羅列した本を、青少年に読ませればいいのかも。


筆者によれば、病的ギャンブリング(ギャンブル依存症)の特徴は、アルコール依存症覚醒剤などの薬物依存と同じく、進行性で自然治癒がないこと。たとえば腫瘍が「説教」で治らないのと同じく、病的ギャンブリングには説教など屁の突っ張りにもならない。
臨床医も勤める筆者のもとを訪れる依存症患者の平均像として、ギャンブルの開始年齢は20歳、借金開始は27歳、クリニックを訪れるのが39歳。それまでにギャンブルに使った金額は1,300万円(!)というからすさまじい。
ちなみに、クリニックを訪れた100人のギャンブル歴の内訳は、「パチンコのみ」17人「スロットのみ」22人「パチンコとスロット」43人…とここまでで合計82人。パチンコやスロットが全く絡んでいない患者は4人しかいなかったという。本の前半部の体験談も、全てパチンコがらみで依存の地獄に堕ちていく話だった。
なぜこれだけパチンコやスロットがきっかけでギャンブル依存に陥る人が多いのだろうか? その答えの一つとして、パチンコやスロットが日常生活のすぐ隣に氾濫していることが挙げられるだろう。スロットマシーンやルーレット他のギャンブル台は、全世界で250万台あるそうだが、日本のパチンコスロット台は500万台にのぼるという。

「…良く育てようが、悪く育てようが、この病気にはなります。私自身は、本人の生活習慣病だと考えたほうが真実に使いように思います。その証拠に、ギャンブルが始まるのは二十歳前後です。二十歳の行為に親が責任を感じる必要はありません。」

「…一般に、精神医学もそうですが、医学そのものが、薬がない疾患に対して冷淡です。薬がないのですから、製薬会社もその疾患の宣伝はしません。あたかも、医学界、医療界全体が、当該疾患が存在しないかのような錯覚に陥ってしまいます。」