『カジノの文化誌』

カジノの文化誌 (中央選書)
日本でもカジノ法案が提出されるとかされないとかいう話が出ているが、個人的に興味があってカジノのことを少し調べている私に言わせれば、たとえばお台場や大阪の湾岸地域などにある程度の規模のカジノを作ったとしても、先行するアジアの他地域のカジノには到底サービス面で太刀打ちできないのではないかと予測する。
アジアでカジノといえばマカオ。そのマカオは2006年には既にカジノの総売上がアメリカのラスベガスを抜いて世界一になっている。世界で最も稼ぐのは「ウィン・マカオ」で2010年の売上は280億円。世界で最も規模の大きいカジノもマカオにある「ザ・ベネチアン・マカオ・リゾート・ホテル」で、延床面積は5万1,000平方メートル。ちなみにこうしたマカオのカジノの多くは米国資本で、言ってみれば中国人の稼いだドルを吸い上げる巨大な装置として365日24時間動いている。
世界のカジノ市場の総売上は2010年現在約1,100億ドル*1。地域ごとの市場として最も売上が多いのはアメリカで約570億ドル、次いでアジア太平洋地域の約320億ドル、カジノ発祥の地である欧州は約150億ドルとなっており、地域ごとに増減はあるもののとくにアジア地域では毎年大幅に伸張し続けている。
法律の縛りも厳しい日本において、最近躍進しているアジア地域の商業主義の権化のようなリゾート統合型カジノに匹敵するようなサービス、アクセスなどが提供できるとは、とても思えないのだ。


カジノ関連書の中でも本書は2011年に出版された新しいもので、各種データもリーマンショック以降の2010年の数字が並び、とても参考になった。
またデータ比較以外でも、カジノの必勝法や地域ごとのカジノの雰囲気、いわゆる「凄腕ディーラーによる操作」といった都市伝説の検証、はては日本へのカジノ導入を見据えて、カジノと公営ギャンブル、カジノとパチンコの比較なども押さえられており、この分野では最新にして最良に近い研究書と感じた。

*1:比較対象として、日本のゲーム市場は2010年現在約3兆9600億円、世界の競馬市場は売上が約9兆7000億円で控除率が一律15%を計算すると主催者に入るいわゆる「売上」は約1兆4500億円である。