『幻の女』

幻の女 (1977年) (角川文庫)
横溝正史といったら、角川文庫のおどろおどろしい表紙の作品集が有名。そのうち何冊かをタダで入手できたので、暇つぶしに読んでみた。
これまで知らなかったのだが、横溝氏は一連の金田一耕助モノをヒットさせる前に、由利麟太郎という刑事や新聞記者の三津木俊助らを主人公とした探偵小説で人気を得ていたそうで、本作はその系統のスピンオフ作品。

アメリカで「ファントム・ウーマン(幻の女)」と呼ばれ恐れられた女殺人鬼が、日本に帰国してきたと噂が流れる。
しかしその殺人鬼本人と思われていた洋行帰りのジャズ歌手が、投宿先で何者かに片腕を切断され殺される。果たして「幻の女」とは誰なのか、そして何の目的で殺人を続けるのか…?

…まあ何と言うことはない探偵&冒険活劇なのだが、この、作者の主観が地の文に時々入り込んでくる文体*1が、今となっては懐かしくも新しい。江戸川乱歩とかもそうだけど。

*1:「ああ諸君、我らが主人公は、本当に殺されてしまったのだろうか?」みたいなセリフが飛び出す感じ。