「ふたりの5つの分かれ路」

ふたりの5つの分かれ路 [DVD]
つれあいの好きなフランソワ・オゾン監督の作品。
ある夫婦が離婚するところから物語が始まる。最終的に「離婚」に至るまでの、「裏切り」、「出産」、「結婚」、そして「出会い」という5つの「分かれ路」を時間を遡ってたどっていく。いわばオチが最初に提示され、結転承起とストーリーが逆回しで語られていく。
最後は別れるとわかっているので、最初の頃の幸せな二人の姿が逆に物悲しい。
しかし、邦題は「分かれ路」となってはいるが、一つ一つのエピソードを考えてみれば最終的には「別れ」という結果にしか辿り着かないのは分かっている。


悲しい結末から幸せな出会いに遡る…という逆回しのラブストーリーと言えば思い出すのが、ギャスパー・ノエ監督の「アレックス」という映画。人の頭がグシャグシャになる殺人から話が始まり、それが恋人をレイプされた男(ヴァンサン・カッセル)による復讐だったことが明らかになっていく。とにかく暴力描写が凄まじくて、冒頭の頭潰しといい、恋人役のモニカ・ベルッチが約15分間ノーカットの長回しでレイプされるシーンといい、割とそういうのに無感動な私ですら思わず映画館を途中退席しようとした、壮絶な映画だった。
そうやって冒頭に吐き気を催すような暴力シーンを見せておいて、そこから時間を遡っていって、最後にヴァンサン・カッセルモニカ・ベルッチのカップル2人が、ベッドで仲睦まじく抱き合っている出会った頃の場面が流されても…どうしろと言うのだろうか?
アレックス [DVD]


あと逆回し映画といえば「メメント」なんていうのもあった。
これは「ふたりの5つの分かれ路」や「アレックス」あたりが全部で5,6のパートしかないのに対し、時間軸を遡っていくパートと時間軸どおりに進むパートとが平行に流れ、最後に結びつく…という複雑な構成の作品。常に集中して見ていないと、頭の中で話がつながらなくなってしまうので、なかなか疲れる映画だった。
でもこういう頭を使う映画は、私は嫌いではない。
メメント [DVD]



これらの作品を見て思うのは、逆回しの映画と言うのは「逆回し」そのものが主眼になっており、ストーリーについては起承転結に並べなおしてみれば何と言うことはないものだ、ということ。
この考え方を敷衍していけば、要は話の順序の切り貼りの仕方さえ見事ならば、その映画は作品として成立する…ということになるだろうか。たとえば、「パルプ・フィクション」のように。