「ブラザーズ・グリム」

夜、ふと思い立って久々に映画を見に行きました。
テリー・ギリアム監督作品は、マニアの評価の高い「未来世紀ブラジル」はまあ好きですが、「12モンキーズ」は大好き。とにかくあの、シリアスに見せておいてヒラリとブラック・ユーモアで交わすタッチが性に合うのです。
で、期待して見に行ったのですが…少し退屈してしまいました。


グリム童話が作られた下地には、もちろん当時の文字通り「黒い森」に囲まれたヨーロッパの、民間伝承や数々の怪異の言い伝えがあります。
グリム兄弟がそれらを収集し、いわゆる『グリム童話』にまとめたのは、当時ドイツの伝統的な価値観が、ナポレオン支配によって失われつつあったことへの危機感によるものといいます。少しでも国の伝統を残そうとしたわけですな。
これは洋の東西を問わず見られる動きで、たとえばわが国でも、明治の激動期において柳田国男が日本古来の伝承を研究し「民俗学」を体系化したのなんかは、似たような意味合いだと思います。
つまり、「古来から土地に伝わる伝統を見直そう!」という動きは、外からの危機に対するナショナリズムの高まりに、非常に関係が深いということでしょうか。


この映画では、グリム童話に語られている「赤ずきん」「ラプンツェル」「蛙の王子様」「ヘンゼルとグレーテル」といったお話を、本当に起こりえた不思議な話として描いており、グリム兄弟やナポレオンのフランス軍側は「そんなことホントにあるわけないじゃん!」と現代的な視点でそれを見ています。
とくにナポレオン軍は非常に「現代的」に描かれており、その強引なドイツ統治の描写(「怪異が起きるんだったら森ごと焼き払えばいい」的な押し付けがましさ)は、現代の某覇権国家の中東におけるゴーマンぶりを皮肉っていたように思えました。


…そういった勘ぐりはともかく、「鏡の女王」役で出ていたモニカ・ベルッチがとにかく美しくて、出てくるシーンでは完全に陶酔! もっと出て欲しかった…と思っているのは、すでに魔力にかかっているのでしょうか? モニカさんはすっかり現代のビーナスですね。