『ガリヴァ旅行記』(その2)

ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)
1月15日の日記に書いた、『ガリヴァ旅行記』の続き。最後まで読んでしまった。

小人の国の次は、巨人の国。どうもアメリカの西海岸に巨大な半島があって、そこにある周囲から隔絶された国、ということになっているようだ。
今度はガリバーをはじめとする人間たちが、巨人たちのほうからっぽけな存在と見られる側になる。「こんなちっぽけな奴らにも、階級だのがあって、小さな宮殿や家を建てて服を着飾っているのか」というふうに、鷹揚に笑われる立場になるのだ。
面白かったのは女性の描写で、人間の基準で言うと美人にあたるような女性でも、巨人サイズだと肌のしみとか毛穴などがガリバーには仔細に見えてしまうので、嫌悪感を覚えたとある。

  • ラピュタ、バルニバービ、グラブダドリッブ、ラグナグおよび日本渡航記」

ブロブディンナグから戻ってきたガリバーは、またもや船で冒険に出るのだが、海賊に襲われて見知らぬ島に置いてけぼりにされる。
人影を求めて島々を探検していると、空から直径4マイル半の巨大な島が降りてきた。これが空飛ぶ王国ラピュタだった。この国の人々は科学や哲学に長けているのだが、いかんせん自分の世界に没頭しがちで他人の話を聞かないので、横に侍る従者が数分に一回専用の道具で頭を小突いて話に集中を戻させるのだ。当時の英国王立アカデミーの会員たち、なかんずく作者のスウィフトと犬猿の仲だったアイザック・ニュートンら数学者を風刺したものだという。
ラピュタの下にある大陸バルニバービ、これは太平洋のど真ん中にある大陸ということになっているのだが、ガリバーは欧州に帰るべくこの大陸の西にある日本に向かう。
その途中で、魔法使いたちの住む島グラブダブドリッブに立ち寄る。この島の魔法使いたちは、死んだ人の魂を呼び出すことができる。いたこの口寄せみたいに何かが降りてくるのではなく、本人がひょこっと姿を現すのだが、ここでガリバーはアレキサンダー大王、ハンニバルからソクラテス、トマス・モアなどなど、古今の偉人たちを次々に呼び出してもらっては、いろんな質問をする。
アリストテレスデカルトを同時に呼び出して論争させたり、現在の英国の貴族たちの歴代の先祖を全部呼び出して彼らがいかに卑しい出かを知ったりと、なかなか楽しいことをやっている。
この後ガリバーは日本帝国に立ち寄って皇帝に謁見し、踏み絵(この本の中では「十字架を踏む」とある)を行うのをなんとか免除してもらったりしている。そしてオランダ人の船でヨーロッパに帰る。

  • 「フウイヌム国渡航記」

懲りずに自分の船を持って船長として航海に出たガリバーは、乗組員たちの反乱に遭い、またもや見知らぬ島に置き去りにされてしまう。
この島には野生化した人間そっくりの生き物「ヤフー」と、それを家畜として使役している馬の姿をした高等生物「フウイヌム」がいた。
フウイヌムは独自の言葉を持ち、およそ悪というものを知らない高貴な存在として描かれている。前足のつなぎの部分を器用に使って物を持ったりもできる。
その一方ヤフーについては非常に醜悪な動物として描かれており、ガリバーでさえ嫌悪感をあらわにしていて、「ヤフーとは一緒にしないでくれ」と言っている。
いろいろあってガリバーは最後に英国に戻るのだが、ヤフーを嫌悪する習慣が身についていたため、たとえ自分の妻子であっても近寄れないくらい人間嫌いになってしまっている。なんというペシミスティックな終わり方…。