『愛される理由』

愛される理由―State of the heart (朝日文庫)
今週もつれあいのいる鳥取へ。今日はちゃんと飛行機が飛んでよかった。


その飛行機の中で二谷友里恵の『愛される理由』を読了。二谷さんが郷ひろみさんと出会い、恋に落ち、結婚し、妊娠し、腫瘍が見つかり、無事に第一子を産むまでを描いた感動作。


感想を一言で書くなら、「で、どこが“愛される理由”なわけ?」
『百年の誤読』(ISBN:483560962X)でもケチョンケチョンに書かれてたけど、あまりにツッコミどころが多くて、いちいち挙げていくとキリがないくらい。


とにかく周りが見えていないっていうか、自己チューっていうか。以下のような話を、自慢げに書いておられます。

  • ルイ・ヴィトンが嫌いで、パリの本店のレジで待たされたときに(日本語で)キレてやった話 (同時に、レジに並ぶ日本人客をとことんコケにしてます)
  • 芸能人を見かけたら挨拶をするように親からしつけられた話 (つーか向こうは単なる二世タレントの駆け出しのあんたなんて、知らんだろ!)
  • 子供の頃スプーンが曲げられたそうで、それ以外にも何かに迷った時には自分の「内なる声」に耳を傾ければ、大概うまくいく…というオカルトな話 (妄想?)
  • 慶應に通っていた頃は車で学校まで行って、三田キャンパスの正門の並びにある接骨院の急患用の路上駐車帯に停めていた話 (自慢げに書くことかよ)
  • 自分のことを時折「苦笑しながら二谷、考えた」とか、「まさか結婚につながるとは、二谷友里恵、夢にだに思いもしないことだった」とか、気持ち悪い一人称で呼ぶ (バカ?)
  • 路上の「ネズミ捕り」を嫌悪しているので、反対車線で取締りをやっているのを見かけると、後続の車にパッシングして教えてあげる、という話 (余計なお世話じゃ)
  • ホノルルマラソンを完走した郷さんが、ゴールした後も爪先の感覚が無かったと聞いて、「友人の兄が幼い頃に、飼っていたマルチーズの口を輪ゴムで結んだままにしていて、鼻から先が腐りかけた」という話を思い出す二谷さん (『百年の誤読』で読んだときも衝撃だったけど、ちょっと感覚がおかしくない?)
  • 学生時代、ドラマ出演で忙しくて、第二外国語でとっていたフランス語を一年間ほとんど勉強しておらず、試験前の2週間の詰め込み勉強で奇跡的にパスした話 (そんなの俺もそんな感じだったし、っていうか教授が甘かっただけじゃないの?)
  • アメリカ留学に旅立った郷さんを成田でお見送り。自分で運転した帰りの車中では悲しくてボーっとしてしまい、気がついたら時速180キロで羽田まで走ってきていたという話 (ウソつけ! っていうか捕まれ!*1
  • 郷さんがアメリカ留学に旅立ったあと、二谷さんが雑誌のグラビア写真を撮っていたスタジオへ郷さんから国際電話が。二谷さんが電話口に立ったその瞬間、スタジオで流れていたFM放送で、郷ひろみの「REE」がかかった話 (はいはい。)
  • 人が泣くのを見るのがイヤだ、という話 (人の気持ちが分からないだけじゃないの?)
  • 「ニューヨーク=東京間の時差は世界のワーストスリーに入るくらいひどい」という話 (っていうか他はどこだよ!)
  • 妊娠してから胎教の本を読み漁り、それらを混ぜ合わせた独自の胎教をしていた話 (「食事の後、私の日課ともされている胎教を行う。今日も、ひらがなを三つ、アルファベットを一つ、数字を一つと、その加減乗除だった。」…ですって。何それ?)
  • 郷ひろみの映画「舞姫」ロケに同行してベルリンに3ヶ月住んだ時、チェルノブイリ事件の残留放射能を異様に気にして、ミネラルウォーターなどを大量にアメリカから持ち込んだ話 (ほとんどビョーキ)


あとアレですわ、「○○だった──というのはウソで…」という叙法が非常に多い。しかもその「○○」の部分が寒いことこの上なし。

  • (二度目に郷ひろみと会ったとき、前とどこか違うと思い)…母に挨拶する彼を見ながら、「あ」とその違いに気がついた。口の上に七色のひげをたくわえていた──というのはうそで、ふつうのひげをはやしていた。
  • (初めて郷の車に乗って)…車はガンメタの928でも、コンパクトリムジンでもなく、白のカローラだった──というのはうそで、普通の黒のメルセデスセダンだった。
  • (郷との待ち合わせ場所の)マーブルスクエアに二人で入っていくと、彼はヤクザものと同席していた──というのは嘘で、一緒にいたのはマネージャーの小口さんだった。
  • ホノルルマラソン挑戦に向けてトレーニング中の郷さんを見て)日増しに走る距離が伸び、二十キロを超えはじめた頃は、タフな彼もさすがに苦しそうに見えた。そんな時、私は思わず車をとび出して、彼の代わりに走ってあげたい、という衝動に駆られる──はずがない。性格的に。


かわいそうなのは、文庫版の解説を書かされている井上ひさし氏。絶対書きたくなかったんだろうな〜、こんな駄文の解説なんて。


っていうか全然(興味が無かったので)知らなかったんですけど、二谷さんって、郷さんと離婚後に家庭教師のトライの会長と再婚して、現在は同社の代表取締役社長なんですね…。*2

*1:私はスピード違反で捕まったことが、これまでに4回くらいあります。

*2:http://www.trygroup.com/company/com_gaiyou.html