『百年の誤読』
「一昔前のベストセラーを(ブクオフ100円コーナーで買って)読むのが好きだ」と書いていたら、「こういう本があるよ」とある人が教えてくれたのがコレ。早速購入。
20世紀の100年間プラス2001年から2004年までのベストセラー(名著ではなくベストセラーというところがミソ)を、各年一冊づつ計100冊あまりピックアップして、岡野宏文氏と豊崎由美氏がボロクソにけなす…という本。いや、けなしてばかりではないのだが、誉められている本が圧倒的に少ない。
ちなみに紹介されていた本のなかで私が読んだことがあったのは、以下のとおり。
- 田山花袋『蒲団』
- 夏目漱石『それから』
- 芥川龍之介『羅生門』
- 志賀直哉『城の崎にて』
- 武者小路実篤『友情』
- 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
- 江戸川乱歩『押絵と旅する男』
- 吉川英治『宮本武蔵』
- 堀辰雄『風立ちぬ』
- 織田作之助『夫婦善哉』
- 川端康成『雪国』
- 中島敦『山月記』
- 太宰治『斜陽』
- 三島由紀夫『潮騒』
- 石原慎太郎『太陽の季節』
- 五島勉『ノストラダムスの大予言』
- 村上龍『限りなく透明に近いブルー』
- 山口百恵『蒼い時』
- 田中康夫『なんとなく、クリスタル』
- 鈴木健二『気くばりのすすめ』
- 村上春樹『ノルウェイの森』
- ロバート・J・ウォラー『マディソン郡の橋』
- 渡辺淳一『失楽園』(←上巻だけで満腹)
- 五木寛之『大河の一滴』
- 片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』
…25冊。約2割か。こうやって見ると、夏休みの文庫本セールの目録のようだ。まあ間違っても『ノストラダムスの大予言』は「ナツイチ」とかには選ばれないだろうが*1。
意外と読んでないのに自分でも驚いた。いちおう文学部卒なのだが。
ものすごく面白くて一気に読んでしまった。
ただ、この本で両氏がとっている、「いまのわたくしたちのスタンスで昔の本を斬り捨てよう」という姿勢は、それはそれですごく面白かったのだが、書物が書かれたバックグラウンドや作家の身体性みたいなものを考慮しないのは、ちょっとアレだと思った。
両氏がけなしている部分だって、作家の書き癖であったり、言葉の癖であったりするわけで、文章を書くのが下手だから作家としては価値が低いかもしれないが、その人自身の価値というかオモロさに変わりはないと思う。
…それが売れてしまうのが問題なのか?
本書で何度か書かれているように、「ベストセラー=名著」ではない。
それでも戦前のベストセラーなんかはそれなりに問題意識なり内容なりもあるようだが、ベストセラーはどんどんバカ化していく。その境目は、1960年代あたりにあるという話があった。
これは、出版がそのころから大衆化していったからだと思う。つまり本が一部インテリだけが読むものではなくなったことと、無関係ではあるまい。
*1:あ、でも例の「恐怖の大王」の詩は「7の月」について語ってるから、まんざら夏と無関係ってわけでもないのか