『百年の誤読』

百年の誤読
「一昔前のベストセラーを(ブクオフ100円コーナーで買って)読むのが好きだ」と書いていたら、「こういう本があるよ」とある人が教えてくれたのがコレ。早速購入。
20世紀の100年間プラス2001年から2004年までのベストセラー(名著ではなくベストセラーというところがミソ)を、各年一冊づつ計100冊あまりピックアップして、岡野宏文氏と豊崎由美氏がボロクソにけなす…という本。いや、けなしてばかりではないのだが、誉められている本が圧倒的に少ない。
ちなみに紹介されていた本のなかで私が読んだことがあったのは、以下のとおり。

…25冊。約2割か。こうやって見ると、夏休みの文庫本セールの目録のようだ。まあ間違っても『ノストラダムスの大予言』は「ナツイチ」とかには選ばれないだろうが*1
意外と読んでないのに自分でも驚いた。いちおう文学部卒なのだが。


ものすごく面白くて一気に読んでしまった。
ただ、この本で両氏がとっている、「いまのわたくしたちのスタンスで昔の本を斬り捨てよう」という姿勢は、それはそれですごく面白かったのだが、書物が書かれたバックグラウンドや作家の身体性みたいなものを考慮しないのは、ちょっとアレだと思った。
両氏がけなしている部分だって、作家の書き癖であったり、言葉の癖であったりするわけで、文章を書くのが下手だから作家としては価値が低いかもしれないが、その人自身の価値というかオモロさに変わりはないと思う。
…それが売れてしまうのが問題なのか?


本書で何度か書かれているように、「ベストセラー=名著」ではない。
それでも戦前のベストセラーなんかはそれなりに問題意識なり内容なりもあるようだが、ベストセラーはどんどんバカ化していく。その境目は、1960年代あたりにあるという話があった。
これは、出版がそのころから大衆化していったからだと思う。つまり本が一部インテリだけが読むものではなくなったことと、無関係ではあるまい。

*1:あ、でも例の「恐怖の大王」の詩は「7の月」について語ってるから、まんざら夏と無関係ってわけでもないのか