『失楽園(上)』

失楽園(上) (講談社文庫)
ブクオフ100円コーナーシリーズ。下巻は100円コーナーになかったので購入せず。おそらく今後も買うことはないでしょう(笑)。

人間が“楽園”から追放された理由である“性愛=エロス”を徹底的に求め合う男女を描き、人間とは何かを問うた、渡辺文学の最高傑作!

渡辺淳一さんの著作って初めて読むのですが、これが最高傑作だというのなら…ちょっと厳しいなぁ。
とにかく日本語がひどい。話題になったエロ描写も陳腐*1。主人公たちの食ってるもののセンスが悪い*2。着ている服の色のセンスも微妙*3。タイトルも大仰。内容については言を待たず。
閑職になって時間も金も自由になったオッサンと、大学教授の夫に相手にされないカルチャーマダムが、勝手に燃え上がってるようにしか思えない。ようはヒマで金もある中年男女の色恋沙汰。お互いが「この人でないと」という必然性が全く感じられない。
それら以上に我慢できなかったのが、折に触れ主人公がぶち上げる、トンデモ文学論。いわく、「『源氏物語』の六条御息所のアソコは締りが悪かったのではないか」だの「川端康成は『雪国』の主人公に、恋人と再会したとき『この指だけが覚えていた』言わせているが、恋人のアソコを触った感触が指に残っているのなら、それは人差し指じゃなくて中指と書くべきだった」だの。
すべてが浅薄。

*1:やたらと「二人を見ていたのは枕もとの明かりだけだった」とか、何かに見られるという視点を持ち込みたがるのは何故? 主人公が体位を工夫して性的衰えに抗ってる姿とか、「中年の性」を明け透けに描いた点は評価できるかも?

*2:余計なお世話かもしれませんが、冬の山の中の温泉旅館で出された魚料理に喜ぶなよ

*3:細かく書かなきゃいいのに