『新・平家物語(五)』

新・平家物語(五) (吉川英治歴史時代文庫)
全16巻を今年中に読む…というのが目標だから、そろそろ加速していかないと追いつかない。このところ鎌倉幕府周辺の本を渉猟していて、棚上げになっていた第5巻を、一気に読んだ。
これまでの5冊の中ではかなり変化に富んだ巻で、義経の平泉入り、頼朝と文覚の出会い、北条政子との駆け落ち、弁慶登場、そして鹿ケ谷事件…と盛りだくさん。
とくに弁慶が比叡山を代表して朝廷に首を差し出す(のだが直後の鹿ケ谷事件のどさくさで助かる)…という挿話は、これまで聞いたことがなかったので興をそそられた。それにしても院に直訴して配流される文覚といい、比叡山の罪を一人で背負って出頭する弁慶といい、吉川英治は「豪快だが庶民の苦しみを知る僧侶」というキャラが余程好きなようだ。
もっとも「(貴族や武家に対する)庶民の幸せ」は、この大長編に通奏低音として流れているキーワードなのだが。