『霊視の世界 災いを招く霊幸せを呼ぶ霊』

基本線はこの前読み終えた『霊能者として生まれて生きて』(asin:4062054035)と同じ。あちらの方が宜保さん自身の生い立ちや生活に重点が置かれていたのに比べ、本書は霊視の実例をより多く盛り込んだ構成。これも1991年刊なので、とにかくあの頃の宜保さんは絶頂期だったということか。大槻教授も認めていた宜保さんのよいところは、その人柄とは別に、「供養に大金はいらない」と言い切っていたところだった。

 ですから、私が一番皆さんに申しあげたいのは、供養をするのに、大金をつんだり、奇行をする必要はまったくないということです。今まで気づかないでいた思いやりのない行為に対して、お詫びと、感謝の気持ちを込めて、ほんの気持ちだけの供物を捧げればいいのです。
 神様は人間と違ってお金など欲しがらないのです。それなのに、お金儲けのために神様を利用して商売をする人がいるというのは、残念なことだと思います。

この辺の姿勢が、霊感商法や多額の寄付を募る宗教団体とは一線を画すところ。霊視というのは、基本的には宜保さん自身の親切心によるアドバイスなのだ(もっとも、実際に金銭の授受があったのか無かったのか、その辺は不明)。


しかしそういう至極全うなアドバイスとも思える宜保さんのアドバイスの中にも、「これはどうかなあ…」と疑問に思えるものは、やはりいくつか散見される。
たとえば「家が栄える土地を選ぶには」と題した以下のような章。

 さて、さまざまな相談を受けていて、どうすれば禍を避け、幸せになれるかが、私なりにわかってきました。
 人の生活の基盤は家にあります。その家の形、つまり家相やそれが建っている土地に、私たちは大変大きな影響を受けるわけです。

ということで、いわゆる風水等とはまた違った霊的な観点からいくつか家を建ててはならない場所が列記される。いわく、お寺があった場所、井戸があるところ、埋立地、田んぼの跡地、古戦場跡、火事を出した土地(焼死者が出た土地)、等々。
でもこれって、関東大震災や空襲で被害を受けた東京や、何度も戦乱に見舞われた京都など、ほとんど該当する土地になってしまうのではないだろうか…? もっとも宜保さんは、どうしてもそうした土地に家を建てたいならお祓いをすればいいとも書いているが…。


それともう一つ、禍をもたらす可能性があるものとして、動物を使った品物を挙げている。ミンクの毛皮、牛革の靴や鞄、猫の皮を使った三味線などについて「どうか、動物たちの悲しい気持ちと、口がきけずにいるせつなさを思って、供養してあげてください。また、これらの動物は、食用としても使われますから、牛や豚を食べるときは心の底から、感謝をして、『いただきます』と言葉をかけてください。」と言っている。それはまあそうなんだけど…挙句の果てに、友人に降りかかりそうになった霊障の例として、羽毛布団の話をしているのには正直参った。

 Cさんが買おうとしていた羽毛の布団の中には、珍しいことに一羽だけ、非常に頭のいい水鳥が使われているのでした。こんなことはめったにあることではありませんから、私も少し驚いてCさんに説明しました。
「もし、この羽毛布団に毎晩あなたが休むことになると、必ず一羽だけいた利口な水鳥が霊障をおこして、体の調子がわるくなるわ。」

「頭のいい」という判断基準もいかがなものかと思うのだが…頭が悪ければ気にしなくていい、という問題でもなかろうに。


まあ一部にこうして行き過ぎの箇所もあるのだが、「霊よりも人間のほうが怖い」とし、「平凡な暮らしが一番素晴らしい」「生活の基本は思いやり、話しあい」と読者に語りかけるところを見る限り、やはりこの人はちょっとだけその切り口が人とは違うけれど、基本的には、人生経験豊富で親切な苦労人のおばさんに過ぎないように思えてならないのだ。