マルチェロ&アニタ

上記のビリー・ホリデイレスター・ヤングの晩年の再会エピソード、こういう話に個人的に弱い。
かつて恋仲だった2人が、紆余曲折の末また再会するのだが、お互い恋を再燃させるには年を取りすぎてもいるし、分別も付きすぎていて、枯淡な想いだけが後に残る…みたいな。


それで思い出したのが、フェデリコ・フェリーニ監督最晩年の映画「インテルビスタ」の中のワンシーン。この映画自体、フェリーニが自分の若い頃を振り返るというノスタルジックな内容なのだが、そこにゲスト出演していたマルチェロ・マストロヤンニアニタ・エクバーグのダンスシーンは、見ていて思わず泣きそうになった。
YouTubeに映像が落ちていた。最初に出てくるインチキ手品師みたいな格好のオッサンがマストロヤンニで、その後出てくるバスタオルを巻いたトドないしは新宿二丁目の怪物みたいな御仁がアニタである。

2人とも物凄い老醜をさらしているわけだが、2分00秒あたりでマストロヤンニがちょっとした魔法をかけると、途端に2人が若かりし頃に撮られた名作「甘い生活」(もちろん監督はフェリーニ)の時代へと時計が逆回転するのである。4分50秒あたりでは、例のトレビの泉の場面も出てくる。
それを見て少しだけ目元をぬぐうアニタは、もはやトドではなく疑いようのない美女に見えてくるから不思議である。映画の魔法。
ちなみにアニタ・エクバーグは、フェリーニともマストロヤンニとも恋仲にあったそうだ。