「大日本人」

松本人志の初メガホン。
見る前から評判などを聞いて、なんとなくそういう予感はしていたのだが、これは(少なくとも劇場にかかる)映画には全然向いていない作品だと思った。ひとつにはこの人のギャグについて、我々はテレビを通して見ることに慣れすぎているので、その分を割り引いたとしても。何故今さら映画というメディアでやらなければならなかったのか?
これが最初からビデオというパッケージで発表されたり、あるいはテレビの深夜枠で12回シリーズくらいにして放送されていたら、かなり人気が出たと思う。アメリカで大流行りのリアリティー番組の、そのさらにパロディーみたいな感じに上手に仕上がれば、それこそ世界に通用する笑いになったのではないだろうか。私もそれだったらぜひ見てみたい。


映画館で見る映画というのは、わざわざ自分で出向いて見に行くものだから、自分の人生からある時間を作品に差し出すことにより、作品に能動的に関わっていくことで完結するものだと思う。その辺が、家でリラックスして見るテレビ番組と違うところだ。
先日ある雑誌で、ブリュノ・デュモンという映画監督が「映画はスクリーンではなく、観客の中で終わる。私は物語を始めるだけ。」と語っているのを読んだが、まさにそんな感じ。
大日本人」は少なくとも「観客の中で終わる」作品ではないだろう。松本人志の笑いが、そういう種類のものではないのだから。


ようするに、芸としては面白かったけど、映画館では全く笑えなかった。