『刑罰・賭博奇談』

刑罰・賭博奇談 (河出文庫)
髪を切ってもらっている最中に読んでいたのがこれ。
id:backbeatさんのこちらのエントリで紹介されていたのを読んで、面白そうなので買ってみたもの。


著者の宮武外骨氏は、明治から昭和にかけてのジャーナリストにして市井の風俗研究家。かなり変わった人だったらしく、はてなキーワードによると

「滑稽新聞」「スコブル」など多数の雑誌や奇書を刊行し、反骨と風刺諧謔に富む奇人として知られる。
権力揶揄による入獄4回。
幼名「亀四郎」。亀は「外骨内肉」のため、改名する。つまりこれが本名である。なお、本人は姓の「宮」と「武」がともに権力を示すとして嫌い、「外骨」とだけ名乗っていた。

ということで、これだけでもその奇人ぶりがうかがわれる。この本を読むまでは全く知らなかったが、なかなか面白い方のようだ。


「刑罰奇談」のほうは古今東西のあらゆる刑罰を列挙した「私刑類纂」の抜粋で、「賭博奇談」は日本におけるあらゆるギャンブルをいにしえの昔に行われていたものから網羅した「賭博史」からの抜粋。
本書を編集した吉野孝雄氏は巻頭言で、「私刑類纂」を評した東大の法学史学者・中田薫「宮武さんは法学者でないからこんな風な本を出されたが、これは体系づければ優に学位論文たる価値があるものだ」という言葉を紹介しているが、まさにそんな感じ。宮武外骨は、収集した資料を、とにかく体系付けはほとんどしないで、カオスのままで我々の前に提示している。往時のサブカル。

私刑類纂」は大正11年の刊らしいから、ちょうど下に書いている「春の雪」の主人公たち華族が美麗な恋をしているさなかに、外骨氏はエロ・グロ・ナンセンスを収集していたということになる。