『カジノブーム 法制化と公募入札』

カジノブーム―法制化と公募入札
イタリア語で「小さな家」を意味する「Casa」から転じたカジノは、もともとは西洋の王侯貴族が集まって遊興する別荘を指していたそうだ。それがやがてお金を賭けて興じるギャンブルの場所を意味するようになり、現在ではゲーミングに加えて食事やエンターテインメントまで含めたレジャー施設として認知されている。
その「カジノ」という文字が、ここ最近ニュースをにぎわすようになっている。震災復興のために「カジノ特区」を作ろうという動きが見られる一方で、王子製紙の前会長が海外カジノで背負った巨額の借金の穴埋めとして子会社から金を引き出していたという報道も耳目を引いた。
日本では刑法で(公営ギャンブル以外の)賭博は禁じられているのでカジノは非合法なのだが、実際に合法で行われている欧米の事情を知るのに良い本を探していて、本書を見つけた。
筆者の安藤福郎氏は、かなり以前から欧米におけるカジノについて調査研究を重ねてきた方で、マネジメントという視点から比較的客観的にカジノを分類・報告している。


その中で目を引いたのが、「カジノを含めギャンブルの産業は、その出始めの第一段階で、政策的にも事実上も、立地条件についても、運営方法手順についても、賭金の単位や配当についても、全て規制しコントロールすべきであるとの考えが支配的になりがちである」のだが、規制に縛られた産業が伸びないのと同じように、カジノもまた行政の厳しすぎる監督下では先細りしていく…といった記述だった。
この話が日本にも当てはまるのならば、そもそも「特区」的な発想自体が失敗の元になりかねないわけだ。そしてそれは、海外でカジノを経験したことがある人ならみんなうっすらと気付いているのだろうが、刑法を全面的に改正する気がないのならそうやって逃げるしかない…というジレンマ。
筆者がまるで現在の混乱ぶりを予言していたかのような、こんな記述があった。

信仰的なギャンブル反対の宗旨は別にして、観光に必要なトータル・エンターテインメント施設の充実といった意味でのカジノ設備の導入と、住民のギャンブル参加による浪費の心配を、同じ土俵で論じてしまうからゴチャゴチャになるし妥協するポイントもなくなる。そしていったんゴチャゴチャになった時は、筋を通した反対一本槍はスッキリ見えるものだし、数字を並べた説得はウサン臭く見えるものとなる。