NHKアーカイブス「美覚独歩 北大路魯山人の生涯」

今日夜にやっていた「NHKアーカイブス」は、「日本の食文化を『美』の観点から探る」と題して、NHK金沢放送局が制作した番組を2本放映していた。*1
そのうちの前半、1987年放送の北大路魯山人の特集番組を見た。


のっけから例の「パリのトゥール・ジャルダンで鴨をわさび醤油で食った話」。*2

一緒にテーブルについていた作家の大岡昇平が、そのときの模様を語っていた。


あと「へー」と思ったのが、魯山人岡本太郎と交流があったという話。

太郎氏によると、ちょうど父親くらいの年齢の魯山人が、一家で渡欧する岡本家をもてなしてくれたのが最初の出会いだとか。その後も星岡茶寮に招いてくれたりして、「みんなは怖い人だと言っていたけど、自分にはそんな印象はない」と証言していた。
っていうかこれ、どこで話してるんだろう? 後ろの像が気になる。


この番組では(金沢放送局制作ということもあって)魯山人が33歳のときに金沢にやってきて(当時は「福田大観」と号していた)、細野燕台という趣味人のもとに寓居していた時代を軸に、その生涯や美に対するこだわりが描かれていた。
金沢時代のエピソードとして、こんな話が紹介されていた。

  • 細野燕台の家では「大抵の家では1週間居座ると奥方が嫌な顔をしだし、1ヶ月たつと主人が出て行ってもらいたがる。しかしこの家は1ヶ月いてもまったくそんな感じがしない」と奥方に図々しく述べた。
  • 「新しい帽子を買ってきなさい」と燕台から5円を渡された魯山人は、途中金沢を流れる犀川で生きた鮭を見かけ、すぐにこれをもらった5円で譲り受け、急いで帰って刺身におろした。
  • 当時は篆刻師として名を成そうとしていた魯山人は、燕台の紹介で富山に住む篆刻の大家のもとを訪ねたとき、「昨今の篆刻はみんな中国の真似だが、自分は日本独自の篆刻を完成させたい」と大風呂敷を広げながら、古今の篆刻文書をことごとく「読んでいない」と言ったために失笑を買う。魯山人は怒って席を立ってしまう。
  • 失意の魯山人を燕台は山代温泉に連れて行き、ここで旅館の看板を篆刻させた。今でも山代温泉の老舗旅館には、当時の魯山人の手による看板や書画などが残っている。
  • 燕台が自宅の食器を全て自分で焼いていたのをうらやましく思っていた魯山人は、山代温泉で窯を開いていた須田菁華(初代)に陶芸を教わり、ここから陶芸にのめりこんでいった。
  • 金沢の老舗料亭「山の尾」の主人太田多吉は、傲岸不遜な魯山人をやわらかく懐に入れ、加賀料理や懐石料理を教えた。ここでの経験が、後の美食家としての魯山人を育むこととなった。


この辺の金沢時代の魯山人の行跡については、こちらのページも参照のこと。

魯山人の足跡をたどって(「石川県新情報書譜」)
http://shofu.pref.ishikawa.jp/portal/syoku/culture/rosanjin/