「ミュンヘン」

常に雨で濡れた歩道や車。あの水滴は罪の意識の表れだったのか…?


ミュンヘン五輪代表選手団を、パレスチナのテロリストに殺害されたイスラエルは(ここまで実話)、その復讐のために極秘作戦を展開し、テロリストたちを暗殺していく(これはフィクション)…という話。


数千年の流浪の時を経て、イスラエル建国によりようやく安住の地を手に入れたユダヤ人、その影響で土地を追われたパレスチナの民。
その両者の秘密組織どうしが、皮肉にも同じアジトをあてがわれて、顔と顔を突き合わせる場面があった。このときイスラエル側(主人公側)は「我々はETAバスク自由と平和)だ! バスク人だ!」と名乗って衝突を回避。
その後、雑魚寝しながらラジオのチャンネル争いをするシーンが印象的だった。PLO側がアラビア音楽にチャンネルを合わせると、主人公グループの一人はラテン音楽を聴こうとダイヤルを回す。何度か無言でチャンネルを変えあった後、最後に落ち着いた周波数で流れてきたのは──出来すぎた話だが──ソウル歌手アル・グリーンの「Let's Stay Together」だった…。
その翌日に両者が銃火を交えることを考えると、なんとも皮肉な場面だ。


血で血を洗う果ての無い復讐の応酬に、ついに疑念を抱くようになった主人公は、上官にこんなふうに疑問をぶつける。

本当にオリーブの木が恋しいのか? そんなに砂漠の土地が必要なのか?

…それに対して上官が返した言葉は「Absolutery(当然だ)」の一言。「我々はInternationalになりたいのではない、Nationになりたいのだ」と、にべも無い返事だった。
この問題の根深さを象徴するな会話だった。