「RIZE」
冒頭でスクリーンに流れたテロップ。
この映画のダンスシーンは、早回しではありません。
この一文が全てを物語るくらい、凄まじいスピードのダンス・ダンス・ダンス。それは踊りというよりも痙攣に近い感じ。
途中でこの映画の“主役”でもある「クランプ」というダンスを踊る少年たちと、アフリカの民族舞踊を踊る部族とが交互に映し出される場面があったけど、まさに「先祖返り」といったところか。
このクランプというダンスは、本作の舞台であるゲットー地区で、自然発生的に生まれたもので、ヒップホップとアクロバットを混ぜた感じ。そこに各人の「自己主張」というスパイスが掛け合わされている。さらにセクシーな要素を追加した「ストリッパー」という亜種もあるらしい。
腰を落としてひたすら痙攣のような動作(「Bounce」と言っていた)を繰り替えす様は、どこか神がかった感じもした。(ブードゥー教の儀式のように)何かにとりつかれたような。
そのクランプがどうやって発生したのか?
ゲットー地区の少年少女たちにとって、ダンスは悪に染まらないための唯一の手段。
水におぼれて目の前に流れてきた板切れ。それにすがるしかない。
これは絶対に(一時の)流行なんかじゃない。
ここではギャングになるかピエロになるかのどちらかしかない。
…ああ、これが本物(リアル)のHipHopなんだなあ…と思っていたら、
俺たちはヒップホップ界とは違う。
コマーシャライズドされたものはいらない。何故なら俺たち自身が「特注」だから、誰にも買えないんだ!
という話も出ていた。「リアル」な現場ではそういう見方なのか。
棺桶屋で若干20歳の少年が
Life is not a game. No,it's serious.
などとぼんやりつぶやくシーンを見て、これは我々の住む世界とは全然違うな、と感じた。
最高に盛り上がったのは、年に一度行われる「バトルゾーン」というクランプ対決。2チーム対抗で、1名ずつダンスを披露、オーディエンスの反応で優劣を競うというルール。この披露の仕方が、両チーム代表が舞台に上がって交互に踊り、相手を挑発する…という、まさにバトル形式。
フィメール・ダンサーのラニーニャvsミス・プリッシーの対決は、相当アツかった!
CMやポスターにも使われている、真っ青な空の下で汗を飛び散らせて踊る、ラスト近くの場面。流れる曲は「Oh Happy Day」。躍動感あふれるシーンなのに、何故かジンと来て目頭が熱くしまった。
才能は恐れずに出すことだ。
We're gonna rise no matter what. Sky is the limit. But there is no limit.